監修者 | |
株式会社400F オンラインアドバイザー 上田 雄貴 公的保険アドバイザー / 2級FP技能士 / 証券外務員二種 |
医療保険とは
医療保険とは、突然の病気や事故などで発生した医療費を保障する生命保険の一種です。
大きく分けると、国民皆保険制度に基づいて運営される「公的医療保険」と保険会社が運営する「民間医療保険」の2種類が存在し、それぞれの中でさらに細かな種類に分けられます。
日本では法律によって誰もが公的医療保険への加入を義務付けられており、医療機関で健康保険証を提示すれば医療費の1〜3割を負担するだけで、高度な医療を受けられることが特徴です。
一方、先進医療や自由診療の医療費など、公的医療保険だけでは保障されない範囲も存在するため、その範囲をカバーすることを目的として民間医療保険が存在します。
民間医療保険は生命保険業の免許を取得した生命保険会社が販売していますが、昨今では多種多様な医療保険が登場しており、保障内容も商品によって様々です。
自分に合った医療保険を見つけることが困難な時代となりつつあるので、本記事で医療保険の種類や特徴、おすすめの選び方について解説します。
医療保険の加入率
医療保険のおすすめを知りたい方の中には、どれだけの人が医療保険に加入しているのか気になる方も多いのではないでしょうか。
公益財団法人生命保険文化センターの「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」によると、直近の加入率は全体の65%以上となっており、多数の方が医療保険で高額な医療費に備えていることが伺えます。
参照:疾病入院給付金の有無(全生保)|2022(令和4)年度 生活保障に関する調査|生命保険文化センター
参照:疾病入院給付金の有無(全生保)|2022(令和4)年度 生活保障に関する調査|生命保険文化センター
年齢別に見ると、基本的には年齢が上がるにつれて医療保険の加入率も上昇していきます。
誰もが健康保険証を提示することで最大3割の医療費負担に抑えられますが、一般的には年齢が高くなると健康リスクも増大し、医療機関を受診する機会も増えます。
病院にかかる機会が増えれば自己負担分が積み重なり、高額な医療費が家計を圧迫する要因になるため、多くの方が医療保険に加入して、もしものときの高額な医療費に備えています。
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このように年齢上昇とともに加入率が高まっていきますがいくつか注意点があります。
まず、年齢が上がると加入時の保険料負担が高くなるという点です。次に、その時点での健康状態によっては必ずしも加入できるとは限らないということです。
そのため、将来のリスクに対して、今からしっかり考えて、必要な備えをしておくことが大切です。
医療保険の種類
冒頭でもお伝えした通り、日本の医療保険は「公的医療保険」と「民間医療保険」の2種類に分けられます。
さらに細かな種類に分けられるので、それぞれの医療保険の違いについて確認しておきましょう。
公的医療保険と民間医療保険の違い | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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分類 | 公的医療保険 | 民間医療保険 | |||||||||||||||||||||||||||||||
種類 | 国民健康保険 | 健康保険 | 共済保険 | 船員保険 | 終身保険、定期保険、女性保険、引受基準緩和型・無選択型保険など | ||||||||||||||||||||||||||||
被保険者 (運営元) | 各都道府県・市町村など | 全国健康保険協会(協会けんぽ)または健康保険組合 | 各種共済組合 | 全国健康保険協会、船員保険部など | 生命保険会社 | ||||||||||||||||||||||||||||
対象者 | 全日本国民 | 会社員及びその扶養家族 | 公務員及びその扶養家族 | 船員及びその扶養家族 | 保険会社が定める要件を満たす人 | ||||||||||||||||||||||||||||
給付事由 | 病気やケガ、出産、死亡時など | 業務外の病気やケガ、死亡、その他出産時など | 病気やケガ、死亡、その他出産時など | 業務外の病気やケガ、死亡、その他出産時など | 保険会社の規定によって異なる基本的には入院時・手術時 | ||||||||||||||||||||||||||||
保険料 | 前年度の所得を元に計算(医療分・支援金分・介護分の合計) | 保険金額や保障範囲、加入時の告知事項などに応じて変動 | |||||||||||||||||||||||||||||||
加入義務 | 法律で全国民にいずれかへの加入義務がある | 個人の判断で任意加入できる |
日本では国民皆保険制度が採用されており、会社員の方であれば「健康保険」、自営業やフリーランスの方は「国民健康保険」など、誰もが何かしらの公的医療保険に加入しています。
医療機関を受診した際の医療費に対して公的医療保険が適用される仕組みで、基本的には窓口で医療費の最大3割を支払うだけで、日本中のどこにいても高度な医療を受けられることが特徴です。
また、病気やケガで働けない場合の「傷病手当金」や出産された方への「出産手当金」、ひと月あたりの医療費が自己負担限度額を超えた場合の「高額療養費制度」など、様々な保険給付も行っています。
ただし、公的医療保険は原則として医療費への保障しかされず、先進医療や自由診療、差額ベッド代などについては全額を自己負担で賄わなければなりません。
そこで、公的医療保険で保障されない範囲をカバーするために活用されるのが民間医療保険です。
一般的な定期保険や終身保険のほか、女性疾病に特化した「女性保険」、持病がある方でも加入しやすい「引受基準緩和型」などがあります。
公的医療保険とは異なり、保険会社の定める支払事由に該当した場合に現金給付が行われ、医療費への充当のほか、入院や手術にかかる諸費用、生活費への補填など、様々な用途に保険金を活用できます。
ここで、代表的な民間医療保険の特徴を解説するので、医療保険選びの参考にしていただけると幸いです。
終身医療保険
終身医療保険は、一度加入すれば途中解約するまで一生涯にわたって保障を備えられるタイプの医療保険です。
一般的に、医療保険の保険料は年齢が若い方のほうが割安に設定されており、保険期間中に保険料が値上がりすることはありません。
終身タイプの医療保険は加入時の保険料が永久に続くため、年齢が若いうちに終身医療保険に加入しておくと、安い保険料のまま高額な医療保障を備えられます。
また、払い込んだ保険料は保険会社に積み立てられており、途中解約時にその一部が解約返戻金として返還される場合もあります。
一方、同じ保障内容で比較すると、後述の定期医療保険よりも保険料は割高なケースが多い点には注意が必要です。
定期医療保険
定期医療保険は、一定期間に限定して手厚い医療保障を備えられるタイプの医療保険です。
終身医療保険と比べて保険料を安く抑えることができ、高額な医療保障を用意できることが大きなメリットと言えます。
一方、保険料は掛け捨てとなるため、終身タイプのように将来的に解約返戻金などが返還されることはありません。
子どもが生まれてから独立するまでの期間や、住宅ローンを支払い終えるまでの期間など、特定の期間に絞って保障を手厚くしておきたい場合におすすめの医療保険です。
女性保険
女性保険は、乳がんや子宮頸がんといった女性特有の疾病に対して手厚い保障を備えられる医療保険です。
基本的な医療保障に上乗せされる形で保険給付が行われ、入院時や手術時に給付金を受け取れます。
保険会社によっては通常の医療保険のオプションとして「女性保険特約」を付帯できる場合もあります。
ただし、妊娠・出産に伴う自然分娩による入院は、たとえ女性専用の女性保険でも保障対象外のケースがほとんどです。
帝王切開や吸引分娩などの異常分娩の場合しか保障が適用されない場合が多いので、妊娠・出産時の医療費に備えようと考えている方は気をつけましょう。
引受基準緩和型・無選択型医療保険
引受基準緩和型医療保険は、新規加入時の告知事項が3〜5つと一般的な医療保険よりも遥かに少なく、保険会社が加入者を引き受ける際の基準が通常よりも緩和されていることが特徴です。
一方の無選択型医療保険は、新規加入時の告知事項が一切なく、持病や既往症のある方でも医療保険で安心の医療保障を備えられます。
一般的な医療保険は、新規契約の際に年齢や健康状態の告知義務を設けています。
年齢や加入時の健康状態、持病や既往症の有無によって保険料の値上げや支払事由の制約、場合によってはそもそもの保険加入を断られてしまう場合もあります。
引受基準緩和型や無選択型の医療保険は、新規加入時のハードルが低めに設定されていることが特徴ですが、その代わりに毎月の保険料が割高に設定されている点には注意が必要です。
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「持病があっても加入しやすい保険」という言葉をお耳にされたことはないでしょうか?
数年前と比較すると各保険会社の競争もあり、保障内容や付帯できる特約が充実していると感じます。
現在そういった医療保険に加入されている方も、これからご検討される方もどのような商品があるのか・告知項目はどのような項目なのか一度確認されることをおすすめします。
医療保険とがん保険の違いを比較
医療保険を検討する際、「医療保険とがん保険って何が違うの?」と疑問に感じる方も少なくないのではないでしょうか。
簡単に説明すると、医療保険はがんを含む病気やケガ全般の医療費を保障するのに対し、がん保険は保障対象ががんだけに絞られている代わりに、がんに対しては通常よりも手厚い保障を備えられる点に違いがあります。
医療保険とがん保険の違いを比較 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
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種類 | 概要 | メリット | デメリット | ||||||||||||||||||||||||||||||||
医療保険 | 病気やケガ全般(がんを含む)の入院・手術時の医療費に保障が適用される | がん以外の病気やケガも保険金の支払い対象 | 診断時や通院時、先進医療は保障対象外のケースが多い | ||||||||||||||||||||||||||||||||
がん保険 | 診断給付金や通院給付金があり、先進医療保障など、がんが理由の医療費全般を保障 | 通常の医療保険に比べて、がん治療の保障が手厚い | がん以外の病気やケガに対しては一切の保障が受けられない |
一般的な医療保険は、病気やケガ全般の医療費が保障対象となっており、その中にはがん治療の医療費も含まれています。
ただし、基本的にはがんの治療で入院や手術をする際の医療費だけが保障対象で、高額になりやすいがん治療の保障としては不十分な場合があります。
一方のがん保険は、がんだけに特化した医療保険で、がん以外の病気やケガに対しては一切保障が受けられません。
その代わりに、がんと診断された時点で「診断給付金」が支給されたり、通院治療で「通院保障」が適用されたり、通常の医療保険よりも手厚い保障を受けられることが特徴です。
また、がん治療の有効的な選択肢として挙げられる先進医療も保障対象に含まれているため、がん治療全般に特化した医療保障と言えます。
ただし、がん保険には免責期間(90日間など)が設けられており、加入してから一定期間は保障を受けられない空白期間が発生する点には注意が必要です。
また、がん保険は他の病気やケガに対して一切の保障が適用されないため、基本的にはどちらか一方のみに加入するのではなく、保障の重複を避けながら両方の医療保険を併用するのがおすすめです。
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医療保険とがん保険は表裏一体と言えます。医療保険でカバーしきれない部分をがん保険がカバーし、がん保険でカバーしきれない部分を医療保険がカバーするという役割です。
特にがん保険は「治療が長期化する際の備え」といっても過言ではないと思います。最近はがん以外の治療長期化に備えるために三大疾病保険や八大疾病保険というものも存在します。
長期の治療費用は長引けば長引くほど経済的なダメージが大きいため、万全なものにしておきたいところです。
医療保険の保障内容
医療保険の保障内容は「主契約」と「特約」の2つに分けられます。
種類によって保障内容が異なるため、次の一覧表で確認しておきましょう。
医療保険の保障内容 | |||||||||||||||||||||||||||||
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分類 | 種類 | 主な保障内容 | |||||||||||||||||||||||||||
主契約 | 入院給付金 | 病気やケガの治療で入院する場合に支払われる保険金1日あたりの入院給付日額を決め、5,000円や10,000円などの形で給付金を受け取れる保険商品によって免責期間(入院2日目以降から給付開始など)がある | |||||||||||||||||||||||||||
手術給付金 | 病気やケガの治療で手術を行う際に支払われる保険金基本的には入院給付金に一定の倍率を乗じた金額が一括で支給される手術時の入院有無、手術の種類、保険会社の違いなどで倍率が変わる | ||||||||||||||||||||||||||||
特約 | 通院特約 | 退院後に通院が必要な場合に保険金が支払われる特約保険会社や保険商品によっては入院実績がなくても通院給付金が支給される場合もある | |||||||||||||||||||||||||||
先進医療特約 | 先進医療による治療を受けた場合の自己負担分を保障する特約基本的に自己負担分の技術料のみが支払われる | ||||||||||||||||||||||||||||
女性疾病入院特約 | 女性特有の疾病(乳がんや子宮頸管など)で入院した場合に保険金が支給される特約基本的に主契約の保障内容に特約分が上乗せされる形で支給される | ||||||||||||||||||||||||||||
生活習慣病特約 | 生活習慣病(糖尿病、高血圧、脳卒中)で入院した場合に保険金が支給される特約女性疾病入院特約と同様、主契約の給付内容に上乗せされる形で支給される | ||||||||||||||||||||||||||||
三大疾病特約 | 三大疾病(悪性新生物、心筋梗塞、脳卒中)と診断された場合や入院した場合に保険金が支払われる特約診断給付金、入院給付金(入院一時金)などが一括で支給される | ||||||||||||||||||||||||||||
その他の特約 | 支払限度日数を超えても一定期間は入院給付金が支給される「長期入院特約」、がん治療に特化した「がん入院特約・がん診断給付金特約」などがある |
通常の医療保険は、入院給付金と手術給付金が基本保障となります。
主契約の保障内容にオプションとして特約を付帯することで、医療保険を自分や家族に合った保障内容にカスタマイズすることが可能です。
ただし、特約に加入することで毎月の保険料負担が大きくなるため、何でもかんでも特約を付帯するのではなく、自分や家族にとって本当に必要な保障に絞って加入することを検討しましょう。
病気・ケガの際にかかる医療費の目安
日本では公的医療保険が充実しており、基本的には誰もが医療費の1〜3割を負担するだけで医療機関を受診できます。
民間医療保険を検討する際は、公的医療保険の保障分を差し引いた後の不足分を補填する形で保障額を決定するのがおすすめです。
この項目では、傷病別の医療費における入院医療費平均額をご紹介するので、医療保険を比較検討する際の参考にしてみてください。
傷病別の医療費における入院医療費の平均(令和4年) | ||
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傷病名 | 医療費(年間) | 1ヶ月あたりの医療費 |
胃がん | 996,965円 | 83,080円 |
結腸がん | 978,567円 | 81,547円 |
直腸がん | 1,150,026円 | 95,836円 |
気管支および肺がん | 913,065円 | 76,089円 |
急性心筋梗塞 | 1,742,558円 | 145,213円 |
肺炎 | 947,991円 | 78,999円 |
喘息 | 426,705円 | 35,559円 |
脳梗塞 | 1,692,450円 | 141,038円 |
脳出血 | 2,329,182円 | 194,099円 |
糖尿病 | 724,751円 | 60,396円 |
大腿骨頸部骨折 | 2,100,660円 | 175,055円 |
胃潰瘍 | 648,922円 | 54,077円 |
急性腸炎 | 325,613円 | 27,134円 |
急性虫垂炎 | 603,200円 | 50,267円 |
胆石症 | 704,534円 | 58,711円 |
前立腺肥大症 | 584,786円 | 48,732円 |
白内障 | 248,205円 | 20,684円 |
痔核 | 288,120円 | 24,010円 |
子宮筋腫 | 788,447円 | 65,704円 |
狭心症 | 748,416円 | 62,368円 |
腎結石及び尿管結石 | 455,861円 | 37,988円 |
乳がん | 792,609円 | 66,051円 |
膝関節症 | 1,810,344円 | 150,862円 |
鼠径ヘルニア | 434,426円 | 36,202円 |
※当該費用は医療費の総額で、窓口負担は保険等の適用により原則3割(負担割合は所得、年齢により異なる)となります
※高額療養費制度などにより、自己負担額が軽減される場合があります
参照:医療費|2022年度 年間集計(急性期)(PDF)|公益社団法人 全日本病院協会 診療アウトカム評価事業
公益社団法人全日本病院協会が公開するデータを参照すると、がんに罹患した場合の入院費用は90万円を超えており、1ヶ月単位に換算すると8万円以上の入院費用が発生する計算です。
それ以外の病気やケガの際にも高額な医療費が発生するほか、治療方法として先進医療や自由診療を選んだ場合は、全額を自己負担で賄わなければなりません。
公的医療保険のカバー範囲
会社員や公務員が加入する健康保険では、病気やケガによる休業期間中の生活を保障するために「傷病手当金」という仕組みがあります。
連続する3日間を含み、4日以上仕事に就くことができず、休業期間中に給与支払がない場合に、最長1年6ヶ月に渡って保険金が受け取れます。
ただし、自営業やフリーランスの方が加入する国民健康保険には、傷病手当金のような休業期間中の保障制度がありません。
自助努力で休業中の収入減少に備える必要があるため、民間医療保険やその他の生命保険に加入して、高額な医療費に備えておく必要性が高いと考えられます。
差額ベッド代・先進医療費は全額自己負担になる
次の範囲については、会社員の健康保険を含む公的医療保険全般で保障されないので注意が必要です。
- 先進医療
- 自由診療
- 差額ベッド代(室料差額)
差額ベッド代とは、患者が希望して個室や少人数の部屋に入院した場合に発生する費用のことです。
より快適な環境で治療に専念したい場合などに個室を希望される方も多いですが、差額ベッド代に公的医療保険は適用されないので、全額を自己負担で賄わなければなりません。
また、先進医療や自由診療の高額な医療費も公的医療保険の保障対象外なため、民間医療保険からの保険金や貯蓄などで補填する必要があります。
医療費以外にかかる費用
入院や手術をする際には、医療費以外にも諸費用がかかります。
- 入院時の食事代(全国一律460円/食)
- 入院中の衣類
- 通院治療や家族がお見舞いに来る際の交通費
- 入院中の子どもの保育所や預かり所の対応費用
- 治療の副作用による補填(医療用ウィッグや再建手術費用) など
民間医療保険から支給された保険金は用途が限定されていないことがほとんどで、受給後は様々な支払いに保険金を充てられます。
病気や事故などは予測が難しく、突然の入院や手術が必要となるケースは誰にでも起こり得るものです。
特に、貯蓄を子どもの教育資金へ回すためにも、子どもがいる世帯においては医療保険の必要性は高いと考えられるので、これを気にぜひ積極的に検討しておきましょう。
医療保険の選び方
民間医療保険を選ぶ際は、次の2点に着目して比較検討するのがおすすめです。
それぞれのポイントについて詳しく解説していきます。
入院給付金額を決める
医療保険の入院給付金は、病気やケガの治療で入院が必要となった場合に保険会社から支給される給付金のことです。
基本的には「入院給付金日額×入院日数」の計算式で算出され、その金額が一括でまとめて支給されます。
入院給付金額を決める際は、入院費に加えて差額ベッド代(室料差額)や入院中の食事代を考慮するのがおすすめです。
厚生労働省の「主な選定療養に係る報告状況」を参照すると、令和4年7月時点の平均的な差額ベッド代は、次の通りとなっています。
※記載の数値は令和4年7月1日時点の統計です
参照:主な選定療養に係る報告状況|第548回 中央社会保険医療協議会 総会議事録|厚生労働省
入院中の食事代は1食あたり460円(住民税非課税世帯の場合など、諸要件によって軽減)と決められている(2024年2月時点の情報)ため、1日あたり3食として1,380円の食費がかかる計算です。
病気やケガの種類や程度によって異なるものの、一般的な入院費用を1日あたり3,000〜5,000円と仮定した場合、差額ベッド代と食事代込みで1日あたりの入院費用は10,000〜13,000円が必要となります。
上記はあくまで一例で、医療保険の必要保障額は個人によって大きく異なりますが、入院給付金を決める際の目安として活用してみてください。
付帯する特約を検討する
医療保険の主契約でカバーしきれない部分については、特約(特則)で補うことも視野に入れておきましょう。
医療保険の特約には、特定の疾病と診断された場合に一時金が追加支給されるパターンや、支払限度日数が延長されるパターンなどがあります。
- 三大疾病特約:がん、心筋梗塞、脳卒中で入院をする際に一時金が支給される
- 七大疾病特約:がん、心筋梗塞、脳卒中の三大疾病に加え、高血圧、糖尿病、腎不全、肝硬変も保障対象
- 特定疾病入院延長特約:特定の疾病で入院する際、入院給付金の支払限度日数が延長される
これらの特約を付帯することで、安価な保険料で主契約に別の保障を上乗せして、幅広い疾病やケガのリスクに備えられるようになります。
ただし、保障内容によっては他の医療保険を検討したほうが、割安な保険料で高額な保障を備えられるケースもあります。必ず複数の保険会社を比較した上で決めることを心がけましょう。
医療保険を選ぶ際の注意点
医療保険を選ぶ際は、次の3点にご注意ください。
それぞれの注意点についてわかりやすく解説していきます。
免責によって保障されない場合がある
保険会社によっては、医療保険に加入していても入院時や通院時に保障を受けられない「免責事項」が設けられている場合があります。
医療保険の主な免責事項 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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免責事項 | 概要 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
検査入院、自然分娩による入院など | 治療を目的としていないため保障対象外 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
入院を伴わない通院治療 | 記載事項に「退院後」「所定の入院後」などの記述がある場合は保障対象外商品や特約によって入院を伴わない通院治療も保障対象となる場合がある | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
支払限度日数を超えた入院 | 医療保険の支払限度日数を超えた入院は保障対象外特約の付与で保障を受けられる場合もある | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
医療保険の免責日数内の入院 | 医療保険に設けられている免責日数内は保障対象外(入院◯日目から支給、◯日以上の入院が必要など)商品や特約によって入院1日目から支給される場合もある | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
支払事由に該当しない入院や手術など | 保険会社や商品ごとの保障対象以外の入院や手術は保険金が支給されない特約を付帯することで主契約に別の保障を上乗せできる場合もある | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
加入前の持病や既往症など | 基本的に医療保険加入前の持病や既往症は保障対象外 |
これらのほか、加入後や退院後の一定期間における入院や手術が保障対象外となる「免責期間」が設けられている場合もあります。
保険商品の契約約款に必ず明記されているので、医療保険の加入前に必ず確認しておきましょう。
すべての手術が保障対象となるわけではない
民間医療保険は公的医療保険で保障されない範囲もカバーできることが特徴ですが、必ずしもすべての手術が保障対象に含まれているわけではありません。
入院や手術が必要となった場合でも、公的医療保険が適用される一方で、民間医療保険が適用されないケースも多々あります。
保険会社や商品によって保険金の支払事由が決められているので、上述の免責事項と合わせて事前に確認しておくと安心です。
告知した健康状態によっては加入できない場合がある
医療保険に加入する際は、年齢や健康状態などの告知義務があります。
告知した健康状態によっては、医療保険への加入を断られてしまう場合があることも覚えておきましょう。
なお、告知事項は保険会社によって異なるため、保険会社Aで加入できなくとも、保険会社Bの医療保険に加入できるケースも珍しくありません。
持病や既往症がある方でも加入しやすい引受基準緩和型や無選択型保険は保険料が割高なので、まずは複数社で一般的な医療保険を検討するのがおすすめです。
まとめ
日本では公的医療保険が充実しており、誰もが1〜3割の医療費を負担するだけで、日本のどこにいても高度な医療を受けられます。
ただし、公的医療保険では先進医療や自由診療、差額ベッド代や入院中の食事代などは保障されず、長期入院に伴う収入減少に備えることもできません。
公的医療保険は決して万能なわけではないので、保障が不足する範囲については民間医療保険で備えておくと安心です。
民間医療保険は数多くの保険会社が販売していますが、基本的には次の2点に着目して比較検討することで、自分や家族に必要な分の医療保障を備えられます。
ただし、民間医療保険にも「すべての手術が保障対象ではない」「免責事項や免責期間がある」などの注意点があるので、それらを理解した上で比較検討するようにしてください。