引受基準緩和型・無選択型の医療保険とは
引受基準緩和型医療保険と無選択型医療保険は、どちらも健康状態に不安がある方でも加入しやすい医療保険を指す言葉です。
一般的な医療保険は、加入する際に現時点での健康状態や既往歴などを保険会社に告知する義務が課せられています。
告知義務がある理由は、健康状態や年齢、職業などを基に保険料や保障内容を細かく定め、加入者間の公平性を保ちながら保険商品の大原則である「相互扶助」の仕組みを成立させるためです。
そのため、健康状態に不安がある方や持病がある方は、加入時の告知内容によっては新たに医療保険へ加入することが難しいケースがあります。
引受基準緩和型医療保険は、通常の医療保険よりも告知事項が少なく、保険会社が被保険者を引き受ける際の基準が緩和された医療保険です。
一方の無選択型医療保険は、加入時の告知事項が一切設けられておらず、誰でも加入できる医療保険のことを指します。
どちらの医療保険も一般的な医療保険に比べて健康状態に不安がある方や持病がある方でも加入しやすいことが最大の特徴ですが、その代わりに保険料が割高で家計への負担が大きい点に注意が必要です。
緩和型と無選択型の違い
引受基準緩和型医療保険と無選択型医療保険の違いを分かりやすく一覧表にまとめましたので、以下をご確認ください。
引受基準緩和型保険と無選択型保険の違い | ||||
---|---|---|---|---|
種類 | 引受基準緩和型 | 無選択型 | ||
保険料 | 無選択型よりも割安※一般的な生命保険よりも割高 | 引受基準緩和型よりも割高 | ||
告知の有無 | あり※3〜5つ程度 | なし | ||
既往症への保障 | 一定の条件下で保障対象 | 保障対象となる場合が多い | ||
保障の免責 | 保障額が減額されるケースが多い | 一定期間(90日など)は保障が受けられない |
引受基準緩和型医療保険と無選択型医療保険は、告知事項の有無に大きな違いがあります。
引受基準緩和型は加入時に3〜5つ程度の質問事項に回答する必要がありますが、無選択型は加入時の告知事項が一切ありません。
無選択型は既往症が再発した場合も保障対象となるケースが多く、保障範囲が幅広いことが特徴です。一方、加入してから保障が開始されるまでの免責期間が長めに設けられている点には注意が必要です。
緩和型医療保険の告知の例
引受基準緩和型医療保険の一般的な告知項目は、次のとおりです。
- 最近3ヶ月以内に医師から入院・手術・検査・先進医療を勧められたか
- 過去2年以内に入院をしたことがあるか
- 過去5年以内にがん・肝硬変・慢性肝炎で医師の診察・検査・治療・投薬を受けたことがあるか
告知項目は保険会社によって内容が異なります。保険会社Aで加入を断られてしまった場合でも、保険会社Bでは引受基準緩和型医療保険に加入できる場合も少なくありません。
持病がある方や健康状態に不安がある方は、告知項目を確認の上で複数の保険会社を比較検討するのがおすすめです。
緩和型・無選択型と通常の医療保険の違い
通常の医療保険と比較して、引受基準緩和型と無選択型の違いについておさらいしておきましょう。
緩和型・無選択型と通常の医療保険の違い | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
種類 | 通常の医療保険 | 引受基準緩和型保険 | 無選択型保険 | |||||||
告知・診査 | あり※告知書に記載された6〜15程度の質問事項に「はい」「いいえ」のどちらかで回答 | あり※3〜5つの質問事項に「はい」「いいえ」のどちらかで回答 | なし | |||||||
加入対象 | 健康な人(持病が無いなど) | 告知項目に該当しない人 | すべての人※年齢上限あり | |||||||
引受基準 | 保険商品によって異なる | 通常の医療保険よりもゆるい | 引受基準緩和型よりもゆるいただし少額短期保険のみ | |||||||
保障内容 | 制約なし | 持病や既往症も保障対象に含まれる場合が多い通常よりも保障額が低めに設定される可能性が高い | 持病や既往症は保障対象外のケースが多い通常よりも保障額が低めに設定される可能性が高い | |||||||
保障期間 | 定期・終身 | 定期・終身 | 定期 | |||||||
給付金等の制限 | 制約なし | 加入から一定期間(概ね1年間)は給付制限がある場合が多い | 加入後90日間などの免責期間がある場合が多い | |||||||
保険料 | 保険商品によって異なる | 通常の医療保険よりも割高 | 引受基準緩和型よりも割高 |
引受基準緩和型医療保険と無選択型医療保険は、一般的な医療保険に比べて告知項目が少なく、健康状態に不安がある方でも加入しやすいことが特徴です。
引受基準の厳しさは、通常の医療保険>引受基準緩和型>無選択型の順となります。反対に、無選択型医療保険は基本的に誰でも加入できる代わりに保険料は最も高額になります。
引受基準緩和型・無選択型医療保険のどちらにおいても、特約として保障を上乗せできる場合がありますが、いずれも通常の医療保険より保険料が割高なので気をつけましょう。
緩和型・無選択型医療保険の選び方のポイント
引受基準緩和型・無選択型医療保険を選ぶ際は、次の2つのポイントを意識することが大切です。
通常の医療保険に加入できないか検討する
引受基準緩和型や無選択型の医療保険を検討する前に、まずは加入できそうな通常の医療保険がないかを確認しておきましょう。
先述のとおり、引受基準緩和型や無選択型医療保険は、持病や健康状態に不安がある方でも加入しやすい点が特徴ですが、その代わりに保険料が割高な点が特徴です。
医療保険の引受基準は保険会社ごとで異なるため、保険会社Aで加入を断られても保険会社Bでは通常の医療保険に加入できる場合があります。
一般的に、引受基準緩和型や無選択型医療保険よりも通常の医療保険のほうが保険料は割安で、保障内容や保障範囲も充実しているため、可能であれば通常の医療保険に加入したほうが万全の保障を備えられます。
健康状態に不安がある場合でも、まずは一般的な医療保険へ申し込んでみて、加入が難しい場合に初めて引受基準緩和型や無選択型の医療保険を検討するようにしましょう。
医療保険金額と支払保険料のバランスを考える
先述のとおり、引受基準緩和型と無選択型の医療保険は、一般的な医療保険よりも保険料が割高です。
本当に必要な医療保障に絞っても、通常の医療保険の1.5倍〜2倍ほどに保険料が膨れ上がってしまうケースも少なくありません。
保障を上乗せできる特約の保険料も高めに設定されているため、引受基準緩和型や無選択型医療保険に加入する際は、保険会社から支払われる保険金と、保険会社に対して支払う保険料のバランスを意識しましょう。
日本では公的医療保険が充実しているため、窓口での医療費負担は1〜3割程度に抑えられ、ひと月あたりの医療費が自己負担限度額を超過した場合は高額療養費制度を利用できます。
まずは誰もが利用可能な公的保障の内容を確認し、先進医療や自由診療、入院時の収入減少や差額ベッド代といった公的医療保険が適用されない範囲を補う形で保障範囲を決めるのがおすすめです。
まとめ
通常の医療保険は加入時に健康状態の告知義務があるため、持病がある方や健康状態に不安がある方は、新たに医療保険へ加入することが難しいケースがあります。
引受基準緩和型医療保険は通常よりも告知項目が少なく、無選択型医療保険はそもそもの告知項目が設けられていないため、健康状態に不安がある方でも加入しやすい医療保険です。
ただし、引受基準緩和型と無選択型の医療保険は、通常の医療保険よりも保険料が割高に設定されており、家計の大きな負担となってしまう場合があります。
持病や健康状態に不安がある方は、まずは通常の医療保険に加入できないかを検討し、加入が難しい場合の最終手段として引受基準緩和型や無選択型の医療保険を検討するようにしましょう。