建売住宅やマンションの購入では、住宅の引き渡しと同時に融資が実行されます。しかし注文住宅の場合、引き渡しまでに複数回の支払いが必要になるため、通常の住宅ローンでは資金の捻出が難しくなります。

そこで注文住宅を建てる人が利用するのが、つなぎとして借り入れる短期の無担保ローンの「つなぎ融資」です。
本記事ではつなぎ融資とは何か、仕組みからデメリット、他の借入方法まで詳しく解説します。注文住宅を検討している人や、つなぎ融資とは何か詳しく知りたい人はぜひ参考にしてください。
- つなぎ融資は、注文住宅の引き渡しまでに発生する費用を借入でき、自己資金が十分になくても住宅が購入できる。また、担保が不要のため抵当権を設定せず利用できる
- つなぎ融資のデメリットは、通常の住宅ローンよりも金利が高い傾向にあること、諸費用がかかることなどが挙げられ、融資を受けられる回数や借入期間に制限がある点も注意が必要
- つなぎ融資を利用する以外にも、「分割融資」「土地先行融資」で建物引き渡し時までの費用を支払うことができる
注記:当サイトを経由したお申し込みがあった場合、当社は提携する各企業から報酬の支払いを受けることがあります。提携や報酬の支払いの有無が、当サイト内での評価に影響を与えることのないようにしています。

住宅ローンのつなぎ融資とは
つなぎ融資とは、注文住宅の建物完成前に必要な資金を支払うため、つなぎとして借り入れる短期の無担保ローンです。
つなぎ融資で借りたお金は、建物完成後、住宅ローンの引き渡し時に実行される通常の住宅ローンで返済します。つまり、つなぎ融資と住宅ローンは別々のローンであり、住宅ローン実行とともにつなぎ融資は終了します。
ここでは、注文住宅にかかる費用の目安やつなぎ融資を受けるまでの流れ、実際のシミュレーションを解説します。
注文住宅にかかる費用の目安
住宅ローンのフラット35の調査によると、土地付注文住宅にかかる費用の平均は下記のとおりです。
- 注文住宅の価格:4,903万円
- 土地取得費:1,497.6万円
- 建設費:3,405.8万円
- 手持ち金:473.8万円
- ローン:4,171万円
出典:住宅金融支援機構「フラット35利用者調査(2023年度)」
注文住宅では、建物が完成するまでにこれらの費用を分割で支払います。たとえば、建設費が3,400万円の場合、完成までに発生する費用の相場と目安は下記表のとおりです。
建物が完成するまでに支払う費用の目安 | ||
---|---|---|
相場 | 建設費が3,400万円の場合 | |
契約金 (手付金) | 建設費の5~10%程度 | 170~340万円程度 |
着工金 | 建設費の30%程度 | 1,020万円程度 |
中間金 | 建設費の30%程度 | 1,020万円程度 |
最終金 | 残金 | 1,020~1,190万円程度 |
ただし、上記はあくまで一般的な相場です。実際の費用は住宅会社によって異なるため、注文住宅建築時には各費用がどの程度必要なのか、費用の明細をしっかりと確認しておきましょう。
つなぎ融資を受けるときの流れ・手順
住宅会社や金融機関によっても異なりますが、一般的なつなぎ融資の流れは下記のとおりです。

つなぎ融資の流れ | |||
---|---|---|---|
必要資金を確認する | 全体でかかる費用を確認し、手元金を元につなぎ融資で希望する借入額を算出 | ||
住宅ローンとつなぎ融資を申し込む | 住宅ローン審査の承認後、つなぎ融資に申し込む ※金融機関によっては同時に申し込むことも可能 | ||
つなぎ融資の実行・利息の返済開始 | つなぎ融資の承認後、複数回に分けて融資実行・利息の返済開始 ※つなぎ融資の実行回数は金融機関によって異なる | ||
住宅の引き渡し・住宅ローンの実行 | 建物完成後、住宅の引き渡しと同時に住宅ローンが実行される。このとき、つなぎ融資による借入金は住宅ローンによって全額返済される。以降、住宅ローンの返済が開始する |
ここで重要なポイントは、つなぎ融資を受ける金融機関によって融資の回数が異なることです。
金融機関によっては着工金と中間金の2回のみがつなぎ融資になることもあります。また、審査の結果条件が変わることもあるため、あらかじめ融資の回数とタイミング、審査による条件変更の有無はよく確認しておきましょう。
つなぎ融資を受けた場合のシミュレーション
つなぎ融資は、住宅ローンとは別契約の無担保ローンです。住宅ローンとは金利や返済方法が異なるうえ、諸費用も別々に発生します。
建物完成までに3回のつなぎ融資を受けると、返済費用はどうなるのかをシミュレーションしてみましょう。
つなぎ融資の条件
- 金利:年3.0%(借入期間中の金利変動はなし)
- 融資期間:土地決済日から1年未満
- 返済方法:元金は住宅ローン実行時に一括返済、利息は融資実行の都度融資金から差し引く
- 諸費用:事務手数料11万円、収入印紙代2万円、保証料・団信保険料はなしとする
- 融資額:計3,000万円(土地購入代金の融資1,500万円、着工金の融資750万円、中間金の融資750万円)
つなぎ融資にかかる利息のシミュレーション | ||
---|---|---|
支払う費用 | つなぎ融資口座振込額 | |
1回目(土地購入代金に充当) ・融資期間:180日(6か月) ・融資金額:1,500万円 | 35万1,917円 ・融資事務手数料:11万円 ・収入印紙代:2万円 ・利息:1,500万円×3%÷365日×180日=約22万1,917円 | 1,500万円-35万1,917円=1,464万8,083円 |
2回目(着工金に充当) ・融資期間:120日(4か月) ・融資金額:750万円 | 約7万3,972円 ・利息:750万円×3%÷365日×120日=約7万3,972円 | 750万円-7万3,972円=742万6,028円 |
3回目(中間金に充当) ・融資期間:60日(2か月) ・融資金額:750万円 | 約3万6,986円 ・利息:750万円×3%÷365日×60日=約3万6,986円 | 750万円-3万6,986円=746万3,014円 |
シミュレーションでは、3,000万円のつなぎ融資にかかる諸費用は46万2,875円となりました。融資期間が伸びるとさらに利息がかかるため、工期をよく確認したうえで住宅会社と契約しましょう。
住宅ローンつなぎ融資のデメリット
つなぎ融資のデメリットは主に以下の4つです。
住宅ローンつなぎ融資のデメリット
住宅ローンよりも金利が高い傾向にある(年約1.5%~4%)
つなぎ融資は住宅ローンを借りるまでの短期ローンです。無担保で借り入れできることから、金利は住宅ローンよりも高めの相場になっています。
金利は金融機関によって異なり、年1.5%~4%程度と差があります。なお、金利が低いつなぎ融資は融資回数が少ない傾向にあります。
つなぎ融資を比較する際は、金利とあわせて諸費用の金額や融資回数といった条件面もよく確認しましょう。
契約時に事務手数料や印紙代などの諸費用が発生する
つなぎ融資は住宅ローンとは別契約になるため、諸費用が別に発生します。主な諸費用は融資事務手数料(金融機関によっては保証料もかかる)と契約時の収入印紙代です。
収入印紙代は融資額によって法令で定めがあるものの、融資事務手数料や保証料は金融機関によって異なります。少しでもつなぎ融資にかかる負担を減らしたい人は、諸費用の内訳をよく確認しておきましょう。
住宅ローン控除が適用されない
つなぎ融資は住宅ローンではないため、融資金に住宅ローン控除は適用されません。
ただし、対象の物件が完成して無事に住宅ローンを契約できたら、住宅ローン控除の適用になります。住宅ローン控除の適用要件は入居年によって異なるため、最新の情報は国税庁や国土交通省のページでよく確認しておきましょう。
つなぎ融資の回数や借入期間に制限がある
つなぎ融資では、融資を受けられる回数や借入期間に制限があります。どちらも金融機関によって異なりますが、おおむね以下の制限が設定されています。
- つなぎ融資の回数:2~4回
- 借入期間:1年程度
また、利息の返済方法は、融資実行時にまとめて差し引かれるケースと、毎月所定の返済日に引き落としされるケースがあります。ご自身の建築計画・自己資金の状況に適した条件のつなぎ融資を選びましょう。
つなぎ融資以外の借入方法
注文住宅にかかる費用を用意する方法は、つなぎ融資だけではありません。つなぎ融資以外に活用できる借入方法として、「分割融資」や「土地先行融資」を紹介します。
分割融資
分割融資とは、住宅ローンの融資実行を複数回に分ける融資方法です。つなぎ融資は住宅ローンとは異なる無担保ローンを指しますが、分割融資は住宅ローンの融資を複数回に分けて受け取る方法を指します。

分割融資の特徴
- 住宅ローンと一体化しているため契約は1本
- 諸費用は1本分しかかからない
- 住宅ローン金利で借入れできる
- 融資は複数回に分けて実行(3~4回程度)
- 融資のたびに手数料がかかる
- 提供している金融機関が少ない
分割融資は住宅ローンとして借入れできるため、諸費用や利息の負担を軽減できるのが大きなメリットです。
ただし、提供している金融機関は少なく、多くの場合対面店舗での取扱いとなります。利用したい人はまず各行の窓口に問合せてみてください。
分割融資の融資条件は銀行によって異なるため、必ず以下のポイントを確認しましょう。
分割融資を利用する際の確認ポイント
- 融資のタイミングと回数:融資のタイミングや回数に決まりがあるか確認する
- 契約回数:1回で済むのか、融資のたびに契約が必要なのかを確認する。(複数回契約する場合は、都度諸費用がかかる可能性がある)
- 適用金利:変動金利の住宅ローンの場合は、いつ時点の金利が適用されるのか確認する
- 返済開始時期:融資実行のたびに返済が開始されるのか、すべての融資実行後に返済開始されるのか確認する

土地先行融資
土地先行融資とは、住宅ローンの融資実行を土地購入時と建物完成時に分ける融資方法です。
土地先行融資の特徴
- 住宅ローンと一体化しているため契約は1本
- 諸費用は1本分しかかからない
- 住宅ローン金利で借入れできる
- 融資は通常2回に分けて実行(土地購入時と建物完成時)
- 融資のたびに手数料がかかる
- 提供している金融機関が少ない
土地先行融資では、分割融資と同様に諸費用や利息の負担を軽減できるメリットがあります。ただし、融資タイミングが土地購入時・建物完成時と決まっているため、着工金や中間金の支払いには充当できません。
金融機関によっては、分割融資が不可でも土地先行融資は応じてもらえるケースがあります。まずは各行の窓口に相談してみましょう。
つなぎ融資・分割融資におすすめの住宅ローン
つなぎ融資や分割融資におすすめの住宅ローン(銀行)を紹介します。
つなぎ融資や分割融資におすすめの住宅ローンを扱っている銀行 | ||
---|---|---|
つなぎ融資の金利 | 分割融資の金利 | |
みずほ銀行 | - | 年0.525%~ ※2025年4月1日時点でみずほ銀行より発表済みの変動金利見直しを踏まえた金利を反映しておりますが、今後追加で見直しが生じた場合は変更する可能性があります。 金利引き下げ幅は、お申込内容や審査結果等によって決定いたしますので、ご留意ください。 |
SBI新生銀行 | 年1.45%(融資期間:1年以内) | - |
イオン銀行 | 年4.47%~(融資期間:3か月以上1年未満/一般団信加入の場合) | - |
住信SBIネット銀行 | - | 年0.698%~ |
三井住友銀行 | 年2.875%(融資期間:1年未満) | 年0.925%~ |
※手数料はすべて税込み価格です。
みずほ銀行
みずほ銀行は住宅ローンの分割融資に対応しています。低金利な住宅ローン金利で借入でき、分割融資による追加手数料もないため、借入費用を抑えて注文住宅を購入したい方におすすめです。
SBI新生銀行
SBI新生銀行では、土地購入代金に充てられるつなぎ融資を扱っています。つなぎ融資の金利は年約1.5%~4%が一般的ですが、SBI新生銀行のつなぎ融資は年1.45%(2025年4月時点)と低金利です。また、借入時の事務手数料も0円となっています。
ただし、SBI新生銀行のつなぎ融資は建物の着工金や中間金には利用できません。土地購入代金のみを借入したい場合に検討するとよいでしょう。
イオン銀行
イオン銀行つなぎローンは、イオン銀行住宅ローン申込者(原則自己資金10%以上の場合のみ)を対象に、最大2回のつなぎ融資を実行する商品です。
取扱手数料0円で、イオン銀行住宅ローンの変動金利に1.6%(ワイド団信の場合は1.9%)を上乗せした金利で利用できます。
借入資金は建物の着工金と中間金にのみ利用でき、土地購入代金には利用できません。
住信SBIネット銀行
住信SBIネット銀行の住宅ローンには、土地購入時に分割融資を行う「土地先行プラン」があります。ネット銀行ならではの低金利で分割融資を受けられるため、借入費用を抑えつつ注文住宅を購入できます。
土地先行プランを使う場合は、1回目の融資実行後の計画変更には再審査が必要になるので、借入金額などの借入プランはよく精査しましょう。
三井住友銀行
三井住友銀行では、つなぎ融資(つなぎローン)と分割融資対応の住宅ローン(土地先行融資)の両方を扱っています。
三井住友銀行のつなぎローンは、申込支店取扱で住宅金融支援機構直接融資を申し込み、融資が確定している場合に利用可能です。保証人は不要ですが、借入時には33,000円の保証会社手数料がかかります。
三井住友銀行の土地先行融資は、建物に対する融資とは別契約で、土地資金に対する融資を行う住宅ローンです。通常の住宅ローンと同じ金利が適用され、変動金利型・固定金利特約型・全期間固定金利型から金利タイプを選べます。
まとめ
注文住宅で利用されるつなぎ融資とは、建物の引き渡し前に複数回の融資を受けられる無担保ローンです。
つなぎ融資は通常、土地の購入、着工金、中間金などの支払いに充当され、住宅ローンが実行されるまでは利息のみ支払います。
多くの注文住宅で利用されている方法ですが、一方で住宅ローンとは別の契約になるため、住宅ローンとは異なる金利・融資期間になる点は要注意です。融資回数や融資期間にも制限があるため、利用時には細かい条件を確認しましょう。
金融機関によっては、住宅ローンの融資実行タイミングを複数回に分ける分割融資や土地先行融資という方法を選べることがあります。いずれのローンも利用できる金融機関が少ないため、つなぎ融資とあわせて利用可否や条件を確認してみるとよいでしょう。