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医療保険の通院保障は必要? データで見る退院後の通院回数と給付条件を分かりやすく解説します

記事更新日: 2024年09月04日医療保険の通院保障は必要? データで見る退院後の通院回数と給付条件を分かりやすく解説します
監修者
株式会社400F オンラインアドバイザー 黒木信一郎株式会社400F オンラインアドバイザー
黒木 信一郎
公的保険アドバイザー / AFP(日本FP協会認定) / TLC(生保協会認定FP)

入院日数は年々短くなっている

施設別平均入院日数の推移

画像引用:図7 施設の種類別にみた退院患者の平均在院日数の年次推移|3 退院患者の平均在院日数等|令和2年(2020)患者調査の概況|厚生労働省

近年の医療現場では入院日数が年々減少しており、仕事や家事、育児などと両立しながら通院治療を選択するケースが増加傾向にあります

厚生労働省の「令和2年(2020)患者調査の概況」によると、1990年(平成2年)の平均入院日数が44.9日であるのに対し、2020年(令和2年)時点においては32.3日にまで減少しています。

退院後の通院回数は増加傾向

在宅医療の患者数の推移

参照:図3 在宅医療を受けた推計外来患者数の年次推移|1 推計患者数|令和2年(2020)患者調査の概況|厚生労働省

入院日数が減少する一方、近年では退院後の通院回数は増加傾向にあります。

上記の年次推移を見ると、在宅医療(総数)の患者数は1999年(平成11年)が69.5千人であるのに対し、2020年(令和2年)では173.6千人となっており、約2.5倍にまで増加していることがわかります。

通院治療が増加傾向にある理由は、入院日数の減少=完治による退院ではなく、日帰り入院や通院治療を続けているケースが多いと考えられるためです。

近年の医療技術は大きな進化を遂げており、患者の身体への負担を軽減した上で短時間での手術が可能となっています。

今後も通院治療が増加する傾向にあると考えられており、そうした医療環境に応じて、生命保険や医療保険の保障内容も大きく変化しています。

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株式会社400F オンラインアドバイザー 黒木信一郎株式会社400F オンラインアドバイザー
黒木 信一郎
公的保険アドバイザー / AFP(日本FP協会認定) / TLC(生保協会認定FP)

退院後の通院が増加傾向にある理由としては、医療技術の進歩などが主に挙げられます。

内視鏡手術やロボット支援手術などの手術技術の向上や、MRIやCTスキャンなどの高度な診断機器により早期発見と迅速な対応が可能になり、入院日数や治療期間が短縮されています。

また医療コストの削減という一面もあり、医療費を抑制するために入院期間を短縮し、外来治療や在宅医療を推奨する方向に進んでいます。

早期での社会復帰を目的に入院期間を短縮することで、患者は早期に日常生活や職場に復帰することができ、生活の質が向上します。

以上の観点から、これらの要因が相まって、入院期間の短縮と通院回数の増加が見られるようになっています。

医療保険の通院保障とは

通院給付金の保障範囲の例

病気やケガをしたときの医療費に備えて、民間の医療保険に加入している方も多いのではないでしょうか。

医療保険の基本的な保障内容は、病気やケガの治療を目的に入院した場合に支給される「入院給付金」と、手術を行った際に支払われる「手術給付金」の2種類です。

近年では通院保障が特約として付帯する医療保険も登場していますが、多くの医療保険は通院しただけで通院保障が適用されるわけではありません。

一般的な通院保障は、病気やケガで入院給付金を受け取れるような入院をした上で、退院後も継続して通院をした場合に通院給付金が支払われる形です

ただし、保険会社や商品によって通院保障の支払い要件が異なります。

これから医療保険に加入する場合は、入院給付金や手術給付金に加え、通院保障についても確認するようにしましょう。

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医療技術の進歩などにより入院日数の減少と通院回数の増加に伴い、医療保険の従来の保障内容である入院給付金と手術給付金に加え、特約として「通院保障」が付帯できる保険商品が増えています。

さまざまな医療保険がある中で、各社共通して退院後の通院保障であることを理解しておく必要があります。

一般的な外来での通院に関しては対象外となること、また保険会社各社で支払要件が異なる点について注意が必要です。

通院の定義

医療保険の通院保障が適用されるには、医療保険に通院保障特約を付帯した上で、保険会社の定める「通院の定義」に該当した通院治療を受ける必要があります。

一般的な医療保険における通院の定義は、次の通りです。

通院の定義

医師による治療が必要で、外来や往診で治療を受けること

通院に似た言葉として「日帰り入院」が挙げられます。

日帰り入院とは、一般的に入院基本料などの支払いが発生する入院日と退院日が同一日の入院のことです。

たとえば、深夜帯に緊急入院をした後、容態が安定したため即日退院となった場合などが日帰り入院に該当します。

通院と日帰り入院の見分け方は、病院や一般診療所から発行される領収書の「入院料等」の項目に、診療報酬点数が記載されているかどうかで大まかな判別が可能です。

ただし、外来手術を受けた際、入院料等の項目に診療報酬点数が記載される場合もあるので、詳細については治療を受けた診療機関で確認しておくと安心です。

通院給付金が支払われる期間

医療保険の通院給付金が支払われる期間は、退院後4〜6カ月以内の通院で最大30日程度、保険期間の通算は1,000〜1,095日程度など、上限が定められているケースが一般的です。

一部の通院保障特約では、特定の傷病については通常よりも給付期間が長めに設けられている場合や、給付日数に上限が定められていない場合もあります。

通院給付金が支払われる期間を長くするほど、特約分の保険料負担が大きくなる点には注意が必要です。

通院給付金の金額

通院給付金は、通院保障を付帯する際に通院日額を設定し、実際に通院した日数を乗じた金額が支払われます

たとえば、通院日額が5,000円の医療保険に加入中で通院日数が10日間の場合、50,000円分の通院給付金が支払われる計算です。

一般的な通院保障は、入院給付日額の6割程度の給付額で、概ね3,000〜5,000円程度が支給されます。

また、保険商品によっては、通院日数に関わらず一定額の一時金が支給されるタイプの通院保障もあります。

通院給付金の適正金額は個人の考え方や家族構成などによって様々ですが、一般的には通院で働けない時間の収入減少分や、通院時の交通費を考慮して金額を設定するのがおすすめです。

通院保障の必要性

この項目では、通院保障の必要性について見ていきましょう。

厚生労働省の「令和2年(2020)患者調査の概況」を参照すると、退院患者の平均入院日数は32.3日、その後の通院割合は77.7%となっており、退院後も約8割の人が通院治療を続けていることがわかっています。

退院患者の平均在院日数および退院後の通院割合
傷病分類退院患者の平均在院日数退院後の通院割合
総数32.3日77.7%
結核59.5日58.3%
ウイルス性肝炎13.8日85.7%
悪性新生物(がん)19.6日83.2%
胃の悪性新生物22.3日79.4%
結腸及び直腸の悪性新生物16.4日83.7%
気管、気管支及び肺の悪性新生物21.1日80.9%
糖尿病30.6日85.3%
心疾患(高血圧性のものを除く)24.6日78.6%
脳血管疾患77.4日51.4%
肺炎38.0日50.8%
妊娠、分娩及び産褥(さんじょく)7.5日91.5%
骨折38.5日68.5%
※退院患者の平均在院日数は令和2年9月1日〜30日に退院した方が対象です
※退院後の通院割合は「家庭(総数-在宅診療-その他)/総数×100」で計算しています
参照:表6 傷病分類別にみた年齢階級別退院患者の平均在院日数|3 退院患者の平均在院日数等|令和2年(2020)患者調査の概況|厚生労働省
参照:統計表24 推計退院患者数、退院後の行き先×傷病分類×病院―一般診療所別|令和2年(2020)患者調査の概況|厚生労働省

上記の結果を見ると、多くの傷病において6〜8割程度の退院患者が通院治療を続けていることがわかります。

冒頭でもお伝えした通り、入院日数は年々減少する一方で、通院治療は増加傾向にあります。

医療保険に求めるニーズは個人によって様々ですが、どのようなリスクに対して備えたいのかを明確にした上で、本当に必要な保障内容に絞って加入することを心がけましょう。

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株式会社400F オンラインアドバイザー 黒木信一郎株式会社400F オンラインアドバイザー
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入院日数の減少に伴い、退院後の通院回数が増加傾向であることから、今の時代に合った備えとして「通院保障」は必要性が高いものだといえます。

特に重大疾病となると治療期間が長期化することが多く、またその分の通院回数が増えるため大きな病気ほど通院保障が必要となるケースがあります。

特に専門医のいる遠方の病院への通院が必要な場合、交通費は大きな負担となります。通院保障があることで安心して治療を続けることができ、早期回復につながると考えられます。

医療保険以外の通院保障

生命保険の中にはがん保険や傷害保険など、医療保険以外の保険商品に通院保障を付帯できる場合があります。

医療保険の通院保障は入院することが給付条件ですが、医療保険以外の通院保障は必ずしも入院する必要がないケースも多く、通院だけで給付金が支払われることも珍しくありません

この項目では、がん保険と傷害保険における通院保障の特徴を解説します。

がん保険の場合

がん保険の通院保障は、がんの治療が目的で通院した際に日数無制限で通院給付金が支給されます

がん治療のために入院し、退院から一定期間の通院保障や、入院が条件に含まれていない通院保障など、商品によって保障範囲は様々です。

近年のがん治療は通院治療が主流となりつつあり、「令和2年(2020)患者調査の概況」によると、がん治療の入院患者数は12.6万人であるのに対し、通院患者数は24.7万人です。

公的医療保険(健康保険や国民健康保険など)のおかげで医療費は最大3割に抑えられますが、がん治療は長期化しやすいため、通院日数が長くなるほど自己負担分も大きくなっていきます。

通院給付金を受け取ることができれば、少なくとも金銭面での不安は軽減されるので、がん保険における通院保障の必要性は極めて高いと考えられます。

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がん治療の進歩により、外来で行われる治療が増加しており、抗がん剤治療や分子標的治療、免疫療法など、多くの治療が入院せずに外来で行えるようになっています。

通院保障では、こうした外来治療の費用をカバーすることでがん治療における選択肢の幅を広げられるなどのメリットがあります。

傷害保険の場合

傷害保険に通院保障を付帯している場合は、入院を伴わない入院でも給付金が支払われるケースが多々あります。

ケガをした日から一定期間内の通院が給付対象で、支払限度日数を30日程度に定めている傷害保険が一般的です。

なお、傷害保険は、日常生活で起こり得る事故やケガに備えるための保険で、病気は保障範囲に含まれていない点には気をつけましょう。

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怪我の治療については余程の大きな怪我であることを除きほとんどの場合、入院治療ではなく、通院での治療がメインとなります。

怪我による通院治療費(診察料、処置費用、薬代など)は累積すると大きな負担になるため、通院保障があれば、こうした費用を保険でカバーでき、経済的負担の軽減につながります。

また、病気などと異なり、突然起きてしまうケースが多いため、突発的な治療費用に対応でき、経済的な負担を軽減します。

治療後のリハビリテーションも通院で行われることが多いため、通院保障でリハビリの費用もカバーされ、適切なリハビリを受けることができます。

まとめ

医療保険の基本保障は、入院時に支給される「入院給付金」と手術時に支払われる「手術給付金」の2種類です。

昨今では通院治療が増加傾向にあることから、特約として「通院保障」を付帯できる医療保険も数多く登場しています。

ただし、一般的な通院保障は入院をして退院後、一定期間内における通院が保障対象とされているため、ただ通院をしただけで給付金を受け取れるわけではない点には注意が必要です。

また、医療保険以外に「がん保険」や「傷害保険」などで通院保障を付帯できる場合がありますが、必要性はそれぞれの保険商品によって異なります。

たとえば、治療が長期化しやすく、医療費の自己負担分が高額になりやすい悪性新生物(がん)に対しては、がん保険に通院保障を付帯しておくことで安心して治療に専念できるようになります。

個人の考え方によっても通院保障の必要性は変わってくるので、どのようなリスクに備えたいのかを明確にした上で、通院保障を検討するようにしましょう。

株式会社400F オンラインアドバイザー 黒木信一郎

黒木 信一郎

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オカネコ保険比較 編集部

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オカネコ保険比較は「オカネコ」を運営する株式会社400F(フォーハンドレッド・エフ、本社:東京都中央区、代表取締役社長:中村 仁)が運営、デジタル技術を駆使し、保険選びをシンプルで分かりやすく、そして便利にすることで、各人が自身に合った保険を見つけられるよう努め、手続きの煩雑さを減らすことを目指しています。

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