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医療保険の「1入院」とは? 仕組みと支払限度日数の考え方を分かりやすく解説します

記事更新日: 2024年09月04日医療保険の「1入院」とは? 仕組みと支払限度日数の考え方を分かりやすく解説します
監修者
株式会社400F オンラインアドバイザー 黒木信一郎株式会社400F オンラインアドバイザー
黒木 信一郎
公的保険アドバイザー / AFP(日本FP協会認定) / TLC(生保協会認定FP)

医療保険の「1入院」と「免責日数」

医療保険の入院給付金を決める際は自分で支払限度日数を選べますが、その際は保険会社が定める「1入院の定義」と「免責日数」に注意が必要です。

1入院の定義と免責日数について理解しておかないと、実際の入院時に十分な給付金を受け取れず、経済面で困窮する事態になりかねません。

そこで本記事では、医療保険における1入院の定義と免責日数、入院給付金日額を設定する際のポイントを解説します。

医療保険の「1入院」の定義

1入院の定義

一般的な医療保険では、退院日の翌日から一定の期間内(通常180日以内)に再入院した場合、継続した1回の入院とみなされます

この定義は再入院の原因によって、下記のような2パターンに大別でき、各保険会社はいずれかのパターンを採用しています。

医療保険における1入院の定義
  • (A)180日以内の再入院は、退院前と同一あるいは医学上重要な関連がある場合は1入院とみなす。
  • (B)180日以内の再入院は、原因を問わず(退院前と同一あるいは医学上重要な関連があるか否かにかかわらず)1入院とみなす。

パターンAは、退院前と同じ病気やケガまたは重要な関連性が見受けられる場合、180日以内の再入院は1入院とみなされます。

一方のパターンBは、原因に限らず180日以内の再入院が1入院とみなされるため、パターンAよりも支払限度日数の制約を受けやすい状態といえます。

たとえば、40日間の入院で退院後、1ヶ月後に50日間の再入院をした場合、合計90日間の入院とみなされ、支払限度日数を超過した分については入院給付金が支払われません。

医療保険における1入院の定義は、その商品の保険契約書(約款)に記載されているので、必ず確認しておきましょう

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医療保険における「1入院」の定義は保険会社や保険商品によって異なる場合がありますが、主に以下の3点が留意事項になります。

  • 同一の原因による入院:同一の病気やけがによる入院が連続して行われた場合、それらは「1入院」として扱われます。
  • 連続する入院期間:一定期間(通常は180日など)を経過せずに再入院した場合、その再入院は前の入院と同じ「1入院」として扱われます。※インターバル日数は保険会社によりそれぞれ異なります。
  • 入院日数の通算:連続していない入院でも、同じ病気やけがが原因で一定期間内(通常は180日など)に再入院する場合、入院日数が通算され、「1入院」として扱われます。

例:1入院における支払限度日数が60日の場合

ここでは、1入院における支払限度日数の具体的な例を挙げて解説します。

例:1入院における支払限度日数が60日の場合
ケース1回目の入院再入院までの期間2回目の入院1入院の日数給付日数
1肺がんで40日間の入院10日肺がんで50日間の入院90日60日分
2肺がんで40日間の入院10日事故で50日間の入院40日と50日40日分と50日分
3肺がんで40日間の入院181日肺がんで50日間の入院40日と50日40日と50日

ケース1の場合、再入院までの空白期間が180日以内、且つ1回目と2回目の入院が同じ原因のため、合計90日間の1入院とみなされます。

今回の例では支払限度日数が60日間の医療保険に加入しているため、60日分の入院給付金は支払われますが、残り30日分については保険給付が行われません。

ケース2では、それぞれ異なる原因で入院をしたため、上記のパターンA「180日以内の再入院は、退院前と同一あるいは医学上重要な関連がある場合は1入院とみなす」に該当せず、合計90日分の入院給付金が支払われます。

ただし、加入中の医療保険がパターンB「180日以内の再入院は、原因を問わず(退院前と同一あるいは医学上重要な関連があるか否かにかかわらず)1入院とみなす」に該当する場合は、再入院までの期間が180日以内なので入院給付金は60日分のみ支払われます。

最後のケース3は、再入院までの期間が180日を超えているため、同一原因による再入院でも別々の入院とみなされ、それぞれで入院給付金が支給されます。

医療保険の「免責日数」とは

保険会社や商品により、保険会社から受取人に対して一定期間は保険金及び給付金が支払われない「免責日数(免責期間)」が設定されている場合があります

たとえば、免責日数が4日間の医療保険に加入している場合、5日間以上の入院が支払条件となるため、4日間以内の短期入院では入院給付金が支払われません。

医療保険の中には、約款に「5日以上の継続入院で1日目から支給」と記載されている場合があり、この場合は5日以上の入院をした場合、1日目から支払限度日数(または退院日数)までの入院給付金が支払われます。

医療保険の免責日数の例

免責日数の定めがないパターンや日帰り入院も保障対象に含まれている医療保険も登場していますが、通常よりも給付金の支払いハードルが低いことから、免責期間がある医療保険よりも保険料が高い傾向にあります。

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免責日数が設定されている目的としては、保険加入直後に病気やけがが発生する場合、既知の病気や故意による保険金請求を防ぐためであったり、保険会社が加入者の健康リスクを適切に管理するための手段として、免責日数が設けられています。

現代の医療保険においては、昔と違いほとんどの保険会社や保険商品で、免責日数などは設けられていませんが、がん保険については現在も「3ヶ月」や「90日」のような免責期間が設けられているのは同様の考え方によるものです。

平均入院日数の推移

医療保険の入院給付金日額を設定する際、もしものときにどれくらいの入院期間になるか、イメージしづらい方も多いのではないでしょうか。

厚生労働省の「令和2年(2020)患者調査の概況」を参照して、一般的な入院患者の平均在院日数(=入院期間)を確認しておきましょう。

退院患者の平均在院日数の年次推移
退院患者の平均在院日数の年次推移
年度総数病院一般診療所
1987年(昭和62年)44.0日47.3日26.0日
1990年(平成2年)44.9日47.4日28.2日
1993年(平成5年)41.9日43.7日28.9日
1996年(平成8年)40.8日43.4日22.2日
1999年(平成11年)39.3日41.8日19.3日
2002年(平成14年)37.9日40.1日19.0日
2005年(平成17年)37.5日39.2日21.6日
2008年(平成20年)35.6日37.4日18.5日
2011年(平成23年)32.8日34.3日17.5日
2014年(平成26年)31.9日33.2日17.4日
2017年(平成29年)29.3日30.6日12.9日
2020年(令和2年)32.3日33.3日19.0日
参照:図7 施設の種類別にみた退院患者の平均在院日数の年次推移|3 退院患者の平均在院日数等|令和2年(2020)患者調査の概況|厚生労働省

令和2年度における一般的な入院患者の平均在院日数は約1カ月間(32.3日)で、平均在院日数は年々減少傾向にあります。

近年の医療技術の進歩により、これまでは入院が必要な病気やケガの場合でも、昨今では日帰り入院や通院治療の選択肢が増えていることが伺えます。

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病気やけがによる平均入院日数の推移をみると、医療技術の進歩、治療方法の改善、在宅医療の普及など、さまざまな要因から減少傾向にあります。

日本では、1980年代から現在までに平均入院日数が大幅に短縮されています。

  • 1980年代 : 平均入院日数は30日以上でした。
  • 2000年代 : 平均入院日数は20日以下に減少しました。
  • 2010年代以降 : 平均入院日数は15日前後まで短縮されています。

この傾向は今後も続くと考えられており、さらに効率的で患者に優しい医療環境の整備が進むことが期待されています。

参照:厚生労働省「病院報告」一般病床の平均在院日数

傷病別の平均入院日数

厚生労働省の「令和2年(2020)患者調査の概況」では、年齢別・傷病別の平均入院日数も公開されています。

年齢別・傷病別の平均入院日数
傷病分類総数0~14歳15~34歳35~64歳65歳以上
総数32.3日 8.9日12.2日24.4日40.3日
感染症および寄生虫症(結核、ウイルス性肝炎など)23.7日5.0日7.8日18.7日32.7日
新生物(腫瘍)(胃がん、直腸がんなど)18.2日14.0日10.6日13.3日20.6日
血液及び造血器の疾患並びに免疫機構の障害23.4日9.0日11.3日16.3日28.3日
内分泌、栄養及び代謝疾患24.9日6.1日18.4日14.6日30.6日
精神及び行動の障害(統合失調症、認知症など)294.2日32.5日69.3日214.9日497.1日
神経系の疾患(アルツハイマー病など)83.5日11.8日32.5日50.4日118.6日
眼及び付属器の疾患3.9日6.6日6.0日5.1日3.6日
耳及び乳様突起の疾患8.0日3.8日5.7日5.4日10.0日
循環器系の疾患(心疾患、脳血管疾患など)41.5日17.7日26.3日25.3日45.8日
呼吸器系の疾患(肺炎、喘息など)34.5日8.2日8.9日15.3日42.9日
消化器系の疾患(歯肉炎及び歯周疾患、肝疾患など)13.2日5.8日7.2日9.1日16.4日
皮膚及び皮下組織の疾患25.7日6.8日9.3日14.7日33.4日
筋骨格系及び結合組織の疾患31.9日10.9日13.6日20.4日37.9日
腎尿路生殖器系の疾患24.5日9.7日6.1日11.8日32.2日
妊娠、分娩及び産褥(さんじょく)など7.5日11.3日7.2日8.1日
参照:表6 傷病分類別にみた年齢階級別退院患者の平均在院日数|3 退院患者の平均在院日数等|令和2年(2020)患者調査の概況|厚生労働省

全体的な平均入院日数は32.3日ですが、65歳以上になると平均入院日数が40日を超えていることがわかります。

一般的に、年齢が上がることで健康リスクが増大し、退院するまでの入院期間が長くなる傾向にあります。

監修者
株式会社400F オンラインアドバイザー 黒木信一郎株式会社400F オンラインアドバイザー
黒木 信一郎
公的保険アドバイザー / AFP(日本FP協会認定) / TLC(生保協会認定FP)

年齢別では、高齢者の入院日数が長く、若年層は短い傾向があります。

  • 高齢者=若年層に比べて平均入院日数が長くなる傾向があります。また、高齢者が多くの慢性疾患を抱えていることや、入院時に合併症を持っていることが多く、これが入院期間を延長する要因となります。
  • 若年層=若年層は、回復力が高く、治療期間も短いことから、平均入院日数が短い傾向があります。入院理由は外傷や急性疾患が多く、これらの治療は比較的短期間で済むことが多いです。

傷病別では、外傷や急性疾患は短く、慢性疾患や精神疾患は長い傾向があります。

医療技術の進歩や在宅医療の普及が入院日数の短縮に寄与している一方で、高齢化社会に伴う高齢者の入院増加が全体の平均入院日数に影響を与えています。

1入院の支払限度日数は「60日」で足りる場合が多い

一般的な医療保険は、契約者が1入院の支払限度日数を30日・60日・120日・180日といった形で自由に選ぶことができます。

ただし、支払限度日数が長くなるほど保険会社が支払う入院給付金が多くなるため、それに応じて毎月の保険料負担も重くなりがちです

上述の「平均入院日数の推移」でご紹介した通り、令和2年度の平均入院日数は32.3日で、年次推移を見ても平均的な入院期間は減少傾向にあります。

当然、傷病や年齢によって入院日数は異なりますが、昨今では医療技術の進歩に伴い日帰り入院や通院治療が選択されるケースも増えているので、医療保険の支払限度日数は余裕を持たせて60日程度あれば十分と考えられます。

監修者
株式会社400F オンラインアドバイザー 黒木信一郎株式会社400F オンラインアドバイザー
黒木 信一郎
公的保険アドバイザー / AFP(日本FP協会認定) / TLC(生保協会認定FP)

医療技術の進歩、在宅医療や外来治療の充実、医療費抑制政策、標準化された治療プロトコルの導入などにより、病気やけがによる平均入院日数は大幅に短縮されています。

このため、医療保険の「1入院」の支払限度日数が「60日」であっても、多くのケースで十分に対応できると考えられます。

もちろん、個々の病状や治療内容によっては例外もあるため、特定の病気や状況に応じた保険商品の選択も重要です。

まとめ

医療保険を契約する際、入院給付金日額の支払限度日数を設定する必要があります。

その際に必ず思い出してほしいのが、保険会社が定める「1入院の定義」と保険金が支払われない期間を指す「免責日数」の存在です。

「退院から180日以内の再入院が同一原因の場合は1入院とみなす」とするケースが多く、場合によっては十分な入院給付金を受け取ることができず、医療費が家計を圧迫する大きな要因にもなりかねません。

医療保険の契約時は、支払限度日数と1入院の定義を理解した上で、入院給付金日額と保険料負担のバランスを考慮することを念頭に置いておきましょう。

株式会社400F オンラインアドバイザー 黒木信一郎

黒木 信一郎

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オカネコ保険比較 編集部

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