監修者 | |
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日本銀行がマイナス金利を導入していたころは、国債は買ってはいけないなどと言われることがありました。しかし世界中でインフレが高まり、金利が正常化に向かう中で国債を購入するメリットも出てきています。
今一度国債の特徴をおさらいして、メリットとデメリットを確認しましょう。この記事では、国債の特徴を確認するとともに、リスクを低減しながら国債に投資していく方法を解説します。
※本記事は、2024年4月30日時点の情報を掲載しています。
- 個人を対象に発行されている日本国債は個人向け国債と新窓販国債の2種類。低リスクで少額から投資でき、預金金利よりも高い金利が払われるため、銀行に預けておくよりも有利な運用となる
- デメリットは相対的な利回りが低く、中途売却時には中途換金調整額がかかったり元本割れリスクがあったりする点や、日本の債務残高が高水準であることなどがあげられる
- 国債の主なリスクとして金利変動リスクと信用リスクがあるが、中途売却をしなければ、金利変動による債券価格下落の影響は受けない。信用リスクを気にしながら国債に投資する場合、個人向け国債を選択するとよい
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個人が投資できる国債は2種類
2024年4月30日時点で、個人を対象に発行されている日本国債は「個人向け国債」と「新窓販国債」の2種類があります。
以下にそれぞれの特徴をまとめてみました。
「個人向け国債」と「新窓販国債」の特徴 | ||||
---|---|---|---|---|
個人向け国債 | 新窓販国債 | |||
年限 | 3年、5年、10年 | 2年、5年、10年 | ||
購入単位 | 額面1万円以上、1万円単位 ※上限なし | 額面5万円以上、5万円単位 ※上限3億円 | ||
金利タイプ | 3年、5年:固定 10年:変動 | 固定のみ | ||
利払い | 年2回 | 年2回 | ||
購入者 | 個人のみ | 個人および法人 | ||
販売価格 | 額面100% | 発行毎に異なる | ||
最低利率 | 年0.05% | なし | ||
中途売却 | 1年後から100%で買い取り可能 ※中途換金調整額がかかる | 時価により常時可能 ※売却益、売却損が出る可能性あり |
※2024年4月30日時点
①個人向け国債
個人向け国債のメリット、デメリットは以下のとおりです。
メリット
- 額面1万円から購入できる
- 1年後から国が100%で買い取る
- 最低金利が保証されている
デメリット
- 1年間は売却できない
- 売却時には中途換金調整額がかかる
- 信用リスクがある
- インフレに弱い
個人向け国債は個人が購入しやすいように設計された債券です。額面1万円から購入可能で、ゼロ金利政策の時でも年0.05%の利率が保証されていました。購入後1年は換金できませんが、その後は額面の100%で国が買い取ってくれます。
ただし、中途売却時には中途換金調整額が差し引かれます。加えて、日本の債務残高が気になる人には信用リスクがありますし、固定利付の3年債や5年債はインフレに弱いというデメリットもあります。
②新窓販国債
新窓販国債のメリット、デメリットは以下のとおりです。
メリット
- 額面5万円から購入できる
- 売却は常時可能
- 購入時の利率は変わらない
デメリット
- 最低利率がない
- 発行が中止になることがある
- 売却損が出ることがある
- 信用リスクがある
- インフレに弱い
新窓販国債は額面5万円から購入できる国債です。発行条件は国債の入札状況により毎月変わります。最低利率がないため、発行利率があまりに低い場合には発行されないことがあります。
売却は常時可能ですが、購入時の金利は満期まで変わらないため、市場金利が上昇したときに売却すると、売却損になることがあります。
個人向け国債同様に信用リスクがあることと、固定利付債なのでインフレに弱いというデメリットがあります。
国債に投資するデメリット
国債に投資する際には、以下に挙げるようなデメリットがあることを覚えておきましょう。
国債はインフレに弱い、他の投資性商品と比較すると利回りが低いというデメリットはあります。2024年時点では長く続いた低金利時代から、金利のある世界に変化しつつあります。金利上昇局面やインフレに弱い国債は、固定金利の債券(新窓販国債、個人向け国債5年・3年)ですので、これから固定金利の国債に投資することについては投資魅力が限定的とも考えられます。一方で個人向け国債10年は変動金利で半年毎の金利の見直しがあり、長期金利上昇に対して追随できる商品です。
利回りが低い
国債は元本割れなし、安心と宣伝されていますが、元本割れがなく安心できる分、相対的な利回りが低くなっています。
例えば2024年4月募集の個人向け国債の利率は、10年変動が年0.50%、5年固定が年0.36%、3年固定が年0.18%となっています。
※参照元:個人向け国債商品概要|財務省
株式の世界では「テンバガー」といって、株価が10倍になる企業もあります。配当は企業の利益状況によって変化するため、確定のものではありませんが、リスクを取ることで、国債よりも高い利回りを得る可能性もあります。
しかし、国債のリターンは元本+利息の総合計ですので、投資金額が何倍にもなって戻ってくることはありません。
中途売却時には元本割れリスクがある
国債は満期まで保有していれば元本100%で償還されます。したがって、日本が破綻しない限り、元本ロスの可能性はありません。ただし満期以前に売却をして換金しようとすると元本割れになる場合があります。
固定利付債は、発行された後に市場金利が上昇すると、価格が下落します。つまり、購入時よりも市場金利が上昇していると中途売却時には、債券価格が下がっていて、売却損が出る恐れがあります。
また、個人向け国債は発行後1年経てば国が額面100%で買い取りますが、前2回分の利子が中途換金調整額として必要です。トータルではゼロもしくはプラスとなりますが、換金時の手取り金額だけ見れば額面より少なく戻ってきます。
インフレに弱い
固定利付債は、最初に利率が決定されると、満期までその利率が変わることはありません。もしインフレが国債の利率を上回って継続していると、将来受け取る金額が目減りしてしまうことがあります。
例えば、利率1%、満期3年の固定利付債を購入したとします。3年後には債券は額面の100%で償還されるとともに、その間の利息1%×3年の3%を受け取ることができ、元利合計で103%が手元に残ります。(税金は考慮せず)
一方で、物の値段は、インフレ率が年2%で3年間継続したとします。100%×(1+2%)³=106.12%となっており、目減りしていることがわかります。このように固定利付債は、インフレに弱いことに注意しましょう。
日本の債務残高が多い
通常、国債はその国における最上位の信用力があり、ポートフォリオ理論の中では、国債は安全資産と位置付けられています。
しかしながら現在の日本は、国債の残高が、2023年末で1,068兆円になっています。また2023年(暦年)の日本のGDPは558.9兆円だったので、GDPに対して国債の残高は約2倍の水準となっています。
※参照元:国民経済計算(GDP統計) : 経済社会総合研究所 – 内閣府
※参照元:日本の借金の状況|財務省
他の先進国と比較しても、日本の対GDP比の債務残高は非常に高くなっています。
もし今後金利が上昇していくと、利払いの金額が増え、国が支払えなくなるリスクもあります。日本の格付けはムーディーズがA1 、S&PがA+(2024年4月26日現在)となっており、債務残高が影響して、先進国の中では低い方といえます。
1年間は換金ができない
通常、国債は発行後すぐに流通市場(セカンダリーマーケット)で売買することができ、換金は容易です。ただし売買価格は時価になります。
個人向け国債に限り、発行後1年経たないと国が買取を行いません。つまり、発行後1年間は原則換金ができないということです。
ただし、大規模災害で被害に遭った時などは特例的に買取を行ってくれます。緊急時に必要な資金であれば、いつでも換金が可能な新型窓販国債を利用すると良いでしょう。国債の中でも個人向け国債だけは換金制限があることを覚えておいてください。
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国債に投資するメリット
国債に投資するメリットには、以下のようなものが挙げられます。
今後、国内金利の上昇が予想されるなか、安定した資金運用をお考えの方には個人向け国債10年は魅力的です。最低金利が保証されながら、長期金利上昇に対しても価格が下がることなく、利回り上昇も期待できます。なお、満期を待たず中途換金をする場合には、直近2回分の利子相当額の中途換金調整額が控除されることにご留意ください。
低リスクで投資ができる
債券は基本的には満期で投資元本が100%で戻ってくるため、元本ロスの生じるリスクが低い商品です。その中でも国債は、国という後ろ盾があるので、償還に関する安全性が高いと言えます。
ただし、他の先進国と比較すると信用リスクは高くなっていることには注意が必要です。また、債券にはデュレーションといって、金利の感応度を計る指数があります。金利が1%動いたときに債券価格がどの程度の割合で動くかの指標です。
デュレーションは償還期限が近付くにつれて、ゼロに近づくため、価格は100%に収斂していきます。したがって、満期に近付くほど国債の価格変動は小さくなっていきます。
少額で投資ができる
株式は基本的には1単元が100株なので、株価の100倍の金額が必要になります。2024年4月26日時点では、東証プライム市場で最も株価の高いのはSMC(6273)で1株80,730円(2024年4月26日終値)です。1単元を購入しようとすると、800万円以上が必要です。
※単元未満株の場合は、100株未満で購入できるものもあります。
最近では1株から購入できるサービスも普及していますが、株主優待を受けるためには単元株が原則必要で、購入や売却も制限があります。
一方、個人向け国債は最低購入額面が1万円、新窓販国債は最低購入額面5万円ですので、1万円もしくは5万円という小さな金額で購入できます。また新窓販国債ならいつでも時価で売却が可能です。個人向け国債の場合、1年間は売却できませんが、その後は100%で国が買い取ってくれます。
毎月購入ができる
個人向け国債も新型窓販国債も、毎月募集が行われます。新型窓販国債は最低金利の保証がないので、利回りが低い場合には募集を休止することがありますが、個人向け国債は最低金利が保証されており、募集が休止になることはありません。
毎月募集されているのであれば、積み立て投資のように毎月購入することが可能です。毎月購入することで金利の変動リスクを軽減することができます。
また、半年続けて購入すれば、毎月利払いを得られるようになり、年金の補完にもなります。他にも毎月募集しているので、お金があるときだけ購入するといった自分のペースで投資できる点も国債の良い点です。
大きな金額の投資ができる
少額から投資できる話とは正反対になりますが、大きな金額を投資したい場合にも国債は良い受け皿となります。例えば、大きな金額で株式に投資しようとすると、投資資金分の株式を購入するために株価を押し上げてしまうことがあります。これをマーケットインパクトと呼びます。
しかし、個人向け国債には上限金額がないので、いくらでも募集価格(額面100%)で購入できます。また銀行預金であればペイオフの1,000万円の枠を意識しなければなりませんが、国債はペイオフの対象外ですので、1,000万円を意識しなくても大丈夫です。
加えて個人向け国債は通常、銀行の預金金利より高い利率がつくので、銀行に預けておくよりも有利な運用となるでしょう。
手数料なしで投資ができる
現在は様々な手数料の無料化がネット証券では進んでいますが、店舗型の銀行、証券会社では投資信託を購入する時など手数料が取られることがあります。また投資信託では、購入手数料以外にも信託報酬などを負担する必要があります。
しかし個人向け国債や新型窓販国債は、購入時の募集手数料はありません。また銀行や証券会社で保管してもらっても、保管手数料が取られることもありません。加えて利金支払時や満期時に元本や利金を受け取る際にもまったく手数料はかかりません。
唯一個人向け国債の中途換金時のみ中途換金調整額がかかりますが、中途換金をしなければこの調整額もかかりません。満期保有が前提ならば、国債は全く手数料なしで投資ができる商品です。
最低金利が保証されている
国債は通常、入札を行って発行条件を決定します。新型窓販国債は、この入札状況を勘案して条件が決定されます。
ゼロ金利政策を行っていた時期に発行された国債では発行条件がマイナス利回りとなることが多く、新窓販国債は販売を休止したことが何回かありました。しかし個人向け国債は最低金利年0.05%を保証していたため、毎月発行していました。
個人向け国債の変動10年は半年ごとに金利を見直しますが、最低金利があるので金利がゼロ%やマイナスにはなることはありません。今後再度金利が低下しても、安心して保有を継続することができます。
国債と他の投資商品のメリット・デメリット比較表
投資する際には、国債だけでなく投資信託や株式も選択肢することができます。
それぞれどのような特徴があるのか、比べてみましょう。
国債・投資信託・株式の特徴 | |||
---|---|---|---|
国債 | 投資信託 | 株式 | |
安全性 | ◎ | 〇 | △ |
収益性 | △ | 〇 | ◎ |
流動性 | ◎ | 〇 | 〇 |
投資の世界では国債はその国においては最高の信用力を持っているため、安全資産と言われています。特に個人向け国債は発行後1年経てば国が買取を行うため、安全性が高いうえに、流動性(換金のしやすさ)もあります。
投資信託はETF(上場投資信託)を除けば、1日1回しか値段がつきません。分散投資が原則なので、リスクもそれほど大きくありません。またプロが運用するので、おまかせで投資することになります。
株式は3商品の中では一番リスクが高いものの、大きな利益を得られる可能性も一番大きくなっています。また株価を頻繁にチェックしたり、投資分析が必要であったりと手間をかける必要があります。
国債でメリットを感じる人
- 安全性を重視する人
- 定期的に利益を得たい人
- 大きな金額を運用する人
投資信託でメリットを感じる人
- ほったらかしで投資をしたい人
- ゆっくり着実に資産を増やしたい人
- 分散投資をしたい人
株式でメリットを感じる人
- 大きな利益を得たい人
- 分析に興味がある人
- 投資に時間をかけられる人
国債のリスクを回避しやすくなる投資方法とは?
国債の主なリスクは基本的には金利変動リスクと信用リスクになります。それぞれのリスクについて、どのような回避方法があるかを説明していきます。
金利変動リスク
金利変動リスクとは、国債を購入した後に金利が変動することです。金利が変動する要因としては、中央銀行による政策金利の変更であったり、インフレ見通しの変更であったりします。市中金利の上昇は固定利付の国債の価格を下落させる働きをします。
ただし国債は満期まで保有すれば額面の100%で償還されますので、中途売却をしなければ、金利変動による債券価格の下落は影響を受けません。
政策金利が引き上げられている局面では、満期までの期間が長い国債よりも短い国債を購入して繋いでいく方が、金利変動のリスクを少なくすることができます。加えて購入時期を分散して購入すれば、金利変動の影響をより少なくできます。
信用リスク
国債の信用リスクを回避する最善の方法は、国債を購入しないことです。ポートフォリオ理論上、国債は安全資産に位置付けられていますが、日本の債務残高に不安があり、いつか破綻するのではと考えている人なら、国債は購入しないのが良いでしょう。
しかし、銀行に預けていても金利は国債より低く、また銀行が倒産してペイオフになったら1,000万円までの元本と利息までしか保証されません。
日本の信用リスクを気にしながらも国債に投資するのであれば、個人向け国債を選択するようにしましょう。個人向け国債であれば、信用不安が出てきても中途換金調整金を払えば、1年後から額面の100%で買い取ってくれます。
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まとめ
国債の投資を考えた場合、株式や投資信託と比較して収益性は劣るものの、安全性が高く、価格変動リスクが小さくなっています。運用に関して利回りよりも元本の安全性を重視する人には国債は良い投資対象といえます。
特に個人向け国債は、購入上限金額がなく、ペイオフの対象外であり、預金金利よりも高い金利が払われます。1年経てば額面100%で国が買い取るので、流動性も高いです。ただし日本の債務残高が高水準にあるので、財政状況につき注意することは必要です