「株式投資は、お金がたくさん必要では?」と考える人も多いと思います。確かに株を1単元(100株)購入しようとすると、比較的多くのお金が必要となります。また、株価は上下動があり、初心者は大きな金額で購入することをためらうかもしれません。しかし、少額投資であれば、損失を限定しながら投資に踏み出すことができます。
このコラムでは少額投資のメリット、デメリットを解説していきますので、よく理解して上手に使えるよう学んでいきましょう。
- 東京証券取引所で株を購入する場合、一部を除いて100株を1単元として購入しなければならないが、単元未満株取引や米国株取引であれば1株から購入可能で、数千円~数万円で投資をはじめられる
- 初心者は10万円程度の少額から投資を始めるのがおすすめ。損失を抑えられ、複数銘柄を購入し分散投資をすることでリスクを軽減させることも可能で、様々な投資方法を試し、投資経験を積むこともできる
- 少額投資のデメリットは、大きな利益は狙えず、手数料が割高になる点や、損失が限定されるため、雰囲気で購入してみたり、損をしても放っておいたりと、計画性をなくしてしまうことなどがあげられる
初心者が株を始めるにはいくら必要?
東京証券取引所で株を購入する場合には、上場株式投信などを除けば、100株を1単元として購入しなければなりません。1株1,000円の銘柄であれば、1単元購入のためには、1銘柄で10万円の資金が必要となります。※手数料考慮せず
1株1,000円の銘柄を1単元購入するのに必要な資金
1,000円×100株=100,000円
※手数料考慮せず
ただし、最近では1単元以下で売買できる単元未満株取引が導入されていてます。
単元未満株取引では、1株から株を購入することができます。したがって、1株1,000円の株なら1,000円×1株=1,000円で株が買えます。※手数料考慮せず
また、単元未満株取引以外でも、米国株取引であれば1株から購入することが可能です。
例えば、1株200ドルの銘柄があるとして、為替レートが1米ドル=155円とすると、200ドル×1株×155円=31,000円と3万円強で購入することができます。※手数料考慮せず
どのような投資を行うかで必要な資金額は変わってきますが、単元株なら数万円から数十万円、単元未満株や米国株なら数千円から数万円で投資を開始することができます。
初心者は10万円程度から株を始めるのがおすすめ
実際に株式に投資する場合には10万円程度の資金で始めるのがおすすめです。10万円の資金がない人は、まずきちんと貯蓄できる状況を作りましょう。
貯蓄する癖がついていないと、少額投資が上手くいっても、その後に追加投入できる資金がないことになります。また、損失が出たときに、新たな資金があれば投資を継続することができます。
また、単元未満株取引や米国株取引なら10万円あれば複数の銘柄を購入することが可能になります。複数の銘柄を持つことは、リスクの低減につながります。
投資の格言に「卵は一つのカゴに盛るな」というものがありますが、1つの銘柄に資金を集中すると、その銘柄が下がった時に動きが取れなくなります。したがって、少し余裕を持って、複数の銘柄を購入できる10万円の資金を用意してから株式投資を始めるのが良いでしょう。
【初心者向け】株式投資を少額(10万円以下)で始める方法
株式投資を少額で始める方法には、以下のようなものが挙げられます。
単元未満株
単元未満株取引とは、1単元(100株)未満の株数で取引を行うことです。
2024年7月31日時点では、東証プライムで1株1万円を超える株価の銘柄は30銘柄程度しかありません。1,600強の銘柄は1万円未満であり、1株であれば、数千円で購入できる銘柄が多くあります。
単元未満株でも配当が支払われれば、株数に応じて配当金を得ることができます。また株主優待については、単元株数保有が条件の会社が多いですが、最低株数の制限のない(例:1株持っていればOKなど)株主優待を提供している会社もあります。
なお、単元未満株取引においては、取扱銘柄数が限られているなど、通常の取引と比較して制限を受けることがありますので、事前によく調べるようにしましょう。
ミニ株
単元未満株取引をミニ株取引と呼ぶこともありますが、厳密にいうとミニ株取引は単元の10分の1で売買できる制度です。単元株に投資するよりも少ない金額で株を購入することができますが、単元未満株よりも多くの投資資金が必要です。
また、ミニ株の場合には、株式の名義人が証券会社の株式ミニ投資口座となるため、配当金については分配を受けることができますが、株主優待は得られません。
なお、2022年3月にSMBC日興証券がミニ株の提供を終了し、現在厳密な意味でのミニ株を提供している証券会社はありません。したがって今では、ミニ株取引=単元未満株取引という意味で使われています。
米国株
米国株は日本株と違い、1株が投資単位となっています。また、米国株は株価が上昇すると分割をして、1株の金額を低くすることが多いため、有名な企業の株を購入する場合でも小さな金額から投資をスタートすることができます。
米国株の時価総額上位の銘柄でも1株600米ドル(約9万円弱)を超える銘柄は数えるほどしかありません。したがって10万円未満の少額投資でも株の購入がしやすくなっています。
ただし、米国株は米ドルで購入する必要がありますので、株価の変動リスクに加えて米ドルの為替変動リスクも負うことに注意が必要です。また、証券会社によって取引時間に違いがあるので、出した注文がいつ有効になるかもよく調べるようにしましょう。
初心者が少額投資で株を始めるメリット
株式投資の初心者には少額投資がおすすめですが、少額投資のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
投資が手軽に始められる
少額投資では、大きな金額を必要としないので、株式投資が手軽に始められます。
例えば、日本の株式に1単元投資しようとすると、多くの銘柄では10万円以上、値嵩株では数百万円が必要となります。一方、少額投資であれば、1株から株の購入をするので、資金としては数百円から数千円もあれば大抵の銘柄は買うことができます。
損失を抑えられる
株式投資では価格が変動するため、元本が保証されているものではありません。したがって、予想と反対の動きになった場合には、損失が出ることがあります。
もし株価が10%下落すれば100万円の投資では10万円のマイナスですが、10万円の投資であれば1万円のマイナスです。特に初心者は損失に敏感になりやすいので、少額投資から始めれば、心理的プレッシャーも少なく投資を始められるでしょう。
分散投資がしやすい
投資の基本として分散投資をしてリスクを低減するというものがあります。1つ目は銘柄分散で、複数の銘柄を保有することです。2番目に地域分散で、投資する国を分散することです。3つ目が時間分散で投資する時期を分けることです。
少額投資なら10万円程度の資金で複数の銘柄を購入できますし、日本と米国に投資することもできます。また時期を分けて投資することもできるので、多額の資金が無くても分散投資が可能です。
投資が学びやすい
投資初心者にとっては、株式の注文を出すことだけでも緊張するものです。「デモトレード」などを利用すれば、発注に慣れることはできますが、実際の注文時には、想定外のことも起きることがあります。
少額投資なら損失も大きくはならないので、初めて株式投資をする人には安心して始められるでしょう。また株価の上下動を実際に感じたり、実際に配当をもらったりすることができるのも、デモトレードにはないメリットといえます。
様々な投資方法を試すことができる
株式投資では、いくつかの投資方法が存在しています。例えばグロース株投資やバリュー株投資などです。
少額投資で複数の銘柄を購入すれば、実際に銘柄を購入して、値動きを観察することも可能です。株式市場の上昇局面では成長性のあるグロース株はパフォーマンスが良く、下降局面では安定性のあるバリュー株の方が値下がりは少ないなどを実際に経験することで、将来の投資に生かしていくことができます。
初心者が少額投資で株を始めるデメリット
手軽に始められる少額投資ですが、以下のような点がデメリットとして挙げられます。
大きな利益は狙えない
少額投資では、購入する株数が少なくなるので、その分利益も小さくなります。100万円の投資であれば10%の利益が出れば10万円ですが、10万円の投資では、10%の利益は1万円にしかなりません。
株式投資ですので、株価が何倍にもなる銘柄を発見するのも醍醐味ですが、そのような銘柄はなかなか発見できるものではありません。少額投資においては、利益の額よりも以下に効率よく増やせるかを学ぶことを優先していきましょう。
手数料が割高になる
少額投資では、一般的な単元株投資と比較して、手数料が割高になることがあります。大手のネット証券では、現在現物株の取引手数料を無料化しているところがありますが、単元未満株取引では手数料が必要であったり、スプレッドと呼ばれる仲値からの差額分が取られたりすることがあります。
特に最低手数料がある証券会社なら、金額が小さい分、率で見た手数料は大きくなります。取引を行う前によくチェックするようにしましょう。
取引の自由度が下がることがある
通常の単元株取引においては、成行や指値、逆指値など様々な注文形態を駆使することができます。しかし、単元未満株取引では、リアルタイム取引のできる証券会社も一部ありますが、多くの証券会社では前場か後場の寄り付き注文でしか約定できないところが多くなっています。
加えて指値注文のできる証券会社は少なく、逆指値などの複雑な注文はできません。トレード手法を試したい人には少額投資は向いていないと言えます。
計画性がなくなりやすい
通常の株取引で成功するためには、銘柄選定を慎重に行い、損切りルールを決めて厳格に運用するなど、計画性が大切です。少額投資の場合、損失が限定されるため、株価が上昇しているからなど、雰囲気で購入してみたり、損をしても放っておいたりするなど、計画性をなくしてしまうことがあります。
これから先も投資で利益を得たいと考えるのであれば、少額投資だからと言って手を抜かず、計画に沿って運営することが大切です。
株を始めるなら新NISAの成長投資枠も活用しよう
NISA(少額投資非課税制度)の内容が2024年より改正され、成長投資枠は年間240万円までと従来の枠から倍増となりました。また、年間の投資枠を使い切らなくても、上限枠の1,200万円に達するまで無期限で持ち越すことができます。加えて売却した分は翌年に枠が復活します。
したがって、少額投資であっても、新NISAを使うことによって、配当や値上がり益を非課税で受けることができます。また無期限の制度となったことで、少額投資でも期限を気にすることなく、投資することが可能となりました。少額投資だからと言ってためらうことなく、是非新NISAを活用するようにしましょう。
まとめ
株に投資するには、単元株であれば数十万円が必要になることもありますが、初心者はいきなり大きい金額で購入するのを不安に思う人もいることでしょう。10万円で少額投資をはじめれば、損失が限定されます。また、複数の銘柄を購入できるので、リスクを軽減させることも可能で、安心して株式投資を始められるでしょう。
また、実際に株を購入することで、株価の変動を感じつつ、配当を得るといったようにインカムゲインを体験できます。少額投資では投資金額が少ない分、大きな儲けは期待できませんが、経験を積んで、金額を増やしてさらに大きな投資に挑戦することができます。
これから投資をはじめようとする人は、まず10万円を貯めて、それから少額投資に挑戦してみてください。