マイナス金利政策が実施されていた時には「債券投資は意味がない」と言われたこともありました。しかし、金利の正常化を迎え、債券投資は意味あるものになってきています。
この記事では、債券投資の基本的な特徴を説明しますので、債券投資のメリットデメリットを理解しましょう。そして、債券投資が自分に向いているかを判断する方法も提示していますので、自分に向いていると思ったら、ぜひ債券投資に挑戦してみましょう。
- 債券投資は「意味ない」と言われる理由として、利回りが低い・インフレに弱い・中途売却時に元本割れのリスクがある・信用リスクがあるといったデメリットがある
- 債券投資のメリットとして、低リスクで少額から投資でき、逆に上限金額がないため、ペイオフの枠を気にせず大きな金額の投資も可能で、購入時や満期時などにも手数料がかからない点があげられる
- 債券投資が向いている人の筆頭は安全性を重視する人で、大きな利益を得たい人や短期間で利益を得たい人には債券投資は不向きといえる。株式程リスクを取りたくないが、債券よりはリターンが欲しいと思う人は、投資信託がおすすめ
債券投資は「意味ない」と言われる理由【デメリットまとめ】
債券投資は意味がないと言われる理由はいくつかあります。主なものを以下に挙げていきます。
債券投資のデメリット
利回りが高くない
投資の世界では、基本的にリスクとリターンは正比例の関係にあります。リスクが低くて、リターンが高い商品があればよいのですが、実際にはハイリターンが期待できるものはハイリスクです。
債券の特徴としては、償還期限があるので、元本割れのリスクが低くなっており、ローリスクな商品設計となっています。一方で債券は、満期償還まで保有する前提であれば、収益は利払いのみになるため、ローリターンとなります。
例えば2024年5月現在の10年国債金利でいえば、日本なら0.5%から1%、米国でも4.5%から5%です。債券投資では固定利付債であれば購入した時点から利率が変更されることはなく、利回りが決まってしまいます。
つまり日本の10年国債に投資すれば、10年間1%程度の金利が受け取れるものの、それ以上の収益は基本的には期待できません。
※税金考慮せず
株価が何倍にもなる可能性のある株式のような投資商品と比較すると、債券の利回りは低いと言えます。
インフレに弱い
固定利付債は、最初に利率が決定されると、満期までその利率が変わることはありません。もしインフレ率が債券の利率を上回って継続していると、将来受け取る金額が目減りしてしまうことがあります。
例えば、利率1%、満期3年の固定利付債を購入したとします。3年後には債券は額面の100%で償還されるとともに、その間の利息1%×3年の3%がもらえ、元利合計で103%が手元に残ります。(税金は考慮せず)
一方で、インフレ率が年2%で3年間継続したとします。物の値段は3年後には100%×(1+2%)³=106.12%となっており、債券の元利金の103%を上回ります。この場合、債券が償還したときにはお金の価値が目減りしてしまうことになるのです。
固定利付債は、インフレに弱いので、低金利の時は、長期の国債の購入は控えたほうが良いでしょう。ただし、変動金利債は、金利が変化するのでインフレにも強いと理解しておきましょう。
中途売却時には元本割れリスクがある
債券は満期まで保有していれば元本100%で償還されます。したがって発行体が破綻しない限り、元本割れの可能性はありません。ただし満期以前に売却をしようとすると元本割れになる場合があります。固定利付債は、発行された後に市場金利が上昇すると、価格が下落します。
例えば、利率1%の10年国債を購入したとします。その後に市中金利が上がり、10年国債の利回りが2%になったとします。市場の要求する利回りは2%なので、利率1%の債券を保有している人が換金しようとすると、価格を低くしなければ買い手が見つかりにくいことは、感覚的に分かると思います。
なお債券には満期があるので、満期に近付くほど価格は100%に近付いていきます。したがって満期に近いところで売却をすれば、市中金利が上昇していたとしても、元本割れの金額は小さいもので済みます。中途売却をしなければ、発行体の破綻以外に債券には元本割れリスクはありません。
信用リスクがある
債券には基本的に格付けというものが付されています。主な格付け会社としては、ムーディーズ(Moody’s)、スタンダード&プアーズ(S&P)、格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)などがあります。
ムーディーズ以外は、格付けの表記方法は同じで、最上位のAAA(トリプルエー)から始まり、AA(ダブルエー)、A(シングルエー)、BBB(トリプルビー)と下がっていきます。BB(ダブルビー)以下を投資不適格と言いますが、個人向けの債券では、BBB以上を販売するのが一般的です。
日本の格付けはムーディーズがA1 、S&PがA+(2024年5月24日現在)で、先進国の中では低い方となっています。格付けが下がると、償還時に元本が支払われなくなるリスクも増えますので、債券投資の際には、格付けに注意が必要です。
仕組債は通常の債券ではない
債券はローリスクで、比較的安全と言われていますが、同じ債券というカテゴリーの中に仕組債というものがあります。仕組債はデリバティブを使って、償還時に外貨で償還(デュアルカレンシー債)したり、株式で償還(EB債)したり、償還価格が株価指数に連動(日経平均連動債)したりするタイプのものです。
これらは○○債と普通の債券のような表示がされていて、通常よりも高い金利が表示されています。しかし通常の債券と異なり、ハイリスクな商品です。場合によっては元本を大きく下回る状態で償還されることもあるので、通常の債券と思って投資しないように注意してください。
債券投資のメリット【デメリットだけじゃない】
債券投資は意味がないと思っている人もいるかもしれませんが、債券投資には以下のようなメリットもあります。
債券投資のメリット
低リスクで投資ができる
債券は基本的には満期で元本が100%で戻ってくるため、元本割れの生じるリスクが低い商品です。また債券は通常格付けを取得していますので、投資の際の参考になります。BBB以上の格付けを投資適格と呼んでいますが、債券投資の際は、少なくともBBB以上の債券に投資しましょう。
また債券にはデュレーションといって、金利の感応度を計る指数があります。金利が1%動いたときに債券価格がどの程度の割合で動くか表しています。
デュレーションは償還期限が近付くにつれて、ゼロに近づくため、価格は100%に収斂していきます。したがって満期に近付くほど債券の価格100%に近付くため、中途売却時の元本割れリスクが低くなります。
少額で投資ができる
株式は基本的には1単元が100株なので、株価の100倍の金額が必要になります。2024年5月24日時点で、東証プライム市場で最も株価の高い銘柄は、SMC(6273)で1株81,900円(2024年5月24日終値)です。1単元購入しようとすると800万円以上が必要です。
最近では1株から購入できるサービスも普及していますが、株主優待を受けるためには単元株が原則必要で、購入や売却も制限があります。
一方、個人向け国債は最低購入額面が1万円ですので、1万円という小さな金額で購入できます。他の国内債、特に事業会社の債券では、10万円、50万円、100万円などの額面金額で発行されることが多いので、購入の際に注意が必要です。
大きな金額の投資ができる
少額から投資できる話とは正反対になりますが、大きな金額を投資したい場合にも国債は非常に良い受け皿となります。例えば大きな金額で株式に投資しようとすると、投資資金分の株式を購入するために株価を押し上げてしまうことがあります。これをマーケットインパクトと呼びます。
しかし個人向け国債には上限金額がないので、いくらでも募集価格(額面100%)で購入できます。また銀行預金であればペイオフの1,000万円の枠を意識しなければなりませんが、国債はペイオフの対象外ですので、1,000万円を意識しなくても大丈夫です。
加えて、個人向け国債は通常、銀行の預金金利より高い利率がつくので、銀行に預けておくよりも有利な運用にもなるでしょう。
手数料なしの投資ができる
ネット証券では様々な手数料の無料化が進んでいますが、店舗型の銀行、証券会社では投資信託を購入する時など手数料を取られることがあります。また投資信託では、購入手数料以外にも信託報酬などを負担する必要があります。
しかし債券は、購入時の募集手数料はありません。また銀行や証券会社で保管してもらっても、保管手数料が取られることもありません。加えて利金支払時や満期時に元本や利金を受け取る際にもまったく手数料はかかりません。
中途で売却をする際にも、個人向け国債は国が買い取るので、手数料は必要ありませんし、それ以外の債券でも売却は証券会社との相対取引になるので、手数料はかかりません。
債券投資が向いているのはどんな人?
債券投資が向いている人
- 安全性を重視する人
- 定期的に利益を得たい人
- 大きな金額を運用する人
債券投資が向いていない人
- 大きな利益を得たい人
- 短期間で利益を得たい人
- 運用を楽しみたい人
債券投資が向いている人の筆頭は、安全性を重視する人です。何度も書きますが、債券には満期があるため、満期まで保有すれば、基本的には元本が戻ってきます。株や投資信託とは違って、この点が債券の最大のメリットです。また債券では大きな金額の運用が容易であり、期中にはコストがかからないのも魅力です。
一方で、大きな利益を得たい人や、短期間で利益を得たい人には債券投資は不向きです。株やFXなどのようなハイリスク・ハイリターンの投資の方が魅力的に感じるかもしれません。また自分で運用を研究したり、投資を楽しんだりしたい人は、株や投資信託などがおすすめです。債券は満期保有が原則なので、変化を楽しみたい人は退屈に感じるでしょう。
SBI証券
- 債券の取扱い本数・種類が豊富
- 外貨入出金手数料が無料
※住信SBIネット銀行の場合
楽天証券
- 個人向け国債、普通社債(円建)、外国債が買える
- 2023年7月から「債券マルシェ™」を提供開始
リスクを抑えながらもリターンを得たい人は投資信託を検討しよう
債券はローリスク・ローリターン、株式はハイリスク・ハイリターンに分類されます。株式程リスクを取りたくないが、債券よりはリターンが欲しいと思う人は、投資信託をおすすめします。
投資信託は多数の人からお金を集めて、投資信託会社というプロの運用者が運用します。多くの金額を集めるので、直接購入が難しい値嵩株にも投資することができます。また様々な商品に投資するので、分散投資となり、リスクが軽減されます。投資信託は投資対象で大きく分けると、以下に分けることができます。
- 日本株式
- 日本債券
- 外国株式
- 外国債券
- 複合型(バランス型)
リスクの低い順に並べると一般的に、日本債券<外国債券<複合型<日本株式<外国株式となります。
リスクが高いものほど、高いリターンも期待できますので、自分の目標とするリターンと許容できるリスクを考えて、銘柄を選択すると良いでしょう。証券会社のWEBサイトでは、投資信託を条件によって検索できるサービスもあるので、投資信託を検討する際には是非使いましょう。
一部の会社では、簡単な質問に答えるだけで、一定の投資配分を提示してくれるサービスもありますので、自分で考えるのが難しいと思う人は活用してみてはいかがでしょうか?
- SBI証券
-
- 総合口座開設数No.1
- 商品ラインナップも充実
- 国内株&米国株の取引手数料無料
- 楽天証券
-
- 楽天ユーザーにおすすめ
- 楽天ポイントが貯まる&使える
- 日経テレコン(楽天証券版)が無料で利用できる
債券の買い時・売り時はいつ?
株式やFXなどと違って、債券は売買での収益を前提にはしていないので、明確な売り時や買い時というものはありません。加えて満期まで保有すれば基本的には元本で償還されるので、売り時というものはあまりありません。
もし売り時があるとすれば、その債券に信用リスクが発生して、格付けが下げられたりしたときになります。債券で一番大きな損が出るのは、償還されない事由(デフォルト)が起きたときだからです。
一方の買い時ですが、政策金利が下げに転換する時が挙げられます。市中金利は政策金利の動向に左右されますが、政策金利は上げ始めたらしばらくは上げ続け、下げ始めたらしばらくは下げ続けます。
したがって政策金利の上昇が一服して、下げに転じるときに債券を購入すれば、高い金利を満期まで得られることになります。ただし政策金利も方向転換することもあることには注意しましょう。
まとめ
マイナス金利政策が導入されていた時期には、債券投資に意味がないこともありました。リターンがほぼゼロなのにリスクがあったからです。しかし金利が正常化に向かっている現状では、債券投資に意味が戻ってきています。債券は満期があるので、満期償還まで保有していれば、元本が戻ってくるのが最大の特徴で、リスクの低い投資をすることができます。
ただしリスクが低い分、リターンも限られるのがデメリットです。投資家の想定するリターンと許容できるリスクは様々ですが、ローリスク・ローリターンでもよいと考える人には、債券投資は大きな意味があると言えます。