全世界株式はおすすめしない理由とは?デメリットやS&P500との違いも説明

全世界株式はおすすめしないってホント?
監修者
株式会社400F オンラインアドバイザー 金子 智株式会社400F オンラインアドバイザー
金子 智
2級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 相続診断士 / 住宅ローンアドバイザー
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資産運用を検討中で「全世界株式」の投資信託を購入すべきかどうか迷っている方も多いのではないでしょうか。

おかねこ

2024年7月に全国の『オカネコ』ユーザー919人に行ったアンケートでは、新NISAを活用して投資している対象について、地域別1位が「アメリカ株」62.7%、2位が「全世界株」60.0%という結果になっています。

アンケート結果:NISAの人気投資先ランキング

インデックスファンドへの投資における王道と言われる全世界株式は、多くの個人投資家から高い人気を博していますが、その一方で「全世界株式はおすすめしない」とする論調もあります。

そこで本記事では、全世界株式をおすすめしないと言われる理由を解説した上で、外国株式への投資を検討する際、よく全世界株式と比較されることが多い「S&P500」とどちらに投資すべきかの判断の参考となる情報を紹介します。

投資信託を購入する際に、リスクをできるだけ減らし、安全かつ安定して利益を出せる商品を選びたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

このコンテンツの3行まとめ
  • 全世界株式をおすすめしない理由として「米国株式の比率が高く真の意味で分散投資になっていない」「成長率が低い国や新興国などの株式も含まれている」点などがあげられる
  • S&P500より全世界株式の方が利回りが低くなるケースもあるため、同じ米国株式へ投資をするなら、運用実績が優れているS&P500へ投資したほうが、よりリターンを得られる可能性がある
  • 全世界株式とS&P500を組み合わせる場合は、綿密な投資戦略を立てた上で、バランスを見ながら資産割合を決めることが大切

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目次

全世界株式ってどんな投資信託なの?

全世界株式とは、国内・国外を問わず全世界の株式を対象とした投資信託のことを指します。

全世界株式1銘柄に投資をすれば、複数の外国株式へ分散投資をすることができ、リスクの軽減につながることから高い人気を博しています。

全世界株式の投資先の内訳について

全世界株式の中で、代表的なインデックスファンドとして「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」があります。

この商品を例に挙げて、実際に投資先の内訳をみてみましょう。

eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)の投資先内訳
順位国・地域比率
1アメリカ61.6%
2日本5.3%
3イギリス3.5%
4フランス2.7%
5カナダ2.6%
6スイス2.1%
7ドイツ1.9%
8インド1.8%
9台湾1.7%
10オーストラリア1.5%
参照:eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)運用レポート 最新の月報(2024年5月)|三菱UFJアセットマネジメント
おかねこ

「全世界株式」という1つのパッケージの中に、さまざまな国の株式が含まれているイメージですね。

なお、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」ですと、投資先の内訳(構成銘柄)は四半期ごとに定期的に見直されて変化するのも特徴です。

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全世界株式はおすすめしないと言われる4つの理由

金融商品への投資で重要とされる分散投資ができる全世界株式ですが、4つの理由から「おすすめしない」と言われることがあります。

この4つの理由について、詳しくみていきましょう。

米国株式の比率が高く真の意味で分散投資になっていない

全世界株式の中で代表的なインデックスファンドの「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」を例に挙げると、投資先の内訳は次の通りです。

eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)の投資先内訳
順位国・地域比率
1アメリカ61.6%
2日本5.3%
3イギリス3.5%
4フランス2.7%
5カナダ2.6%
6スイス2.1%
7ドイツ1.9%
8インド1.8%
9台湾1.7%
10オーストラリア1.5%
参照:eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)運用レポート 最新の月報(2024年5月)|三菱UFJアセットマネジメント

全世界の株が1つのパッケージに含まれているのが全世界株式の特徴ですが、実際の内訳を見ると大多数を米国株式が占めていることがわかります。

また、組入上位の10銘柄はすべて米国企業となっており、実質的に米国株式へ投資をしているのと大差ありません。

eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)の組入上位10銘柄
順位銘柄国・地域業種比率
1MICROSOFT CORPアメリカ情報技術3.9%
2APPLE INCアメリカ情報技術3.8%
3NVIDIA CORPアメリカ情報技術3.7%
4AMAZON.COM INCアメリカ一般消費財・サービス2.2%
5META PLATFORMS INC-CLASS Aアメリカコミュニケーション・サービス1.4%
6ALPHABET INC-CL Aアメリカコミュニケーション・サービス1.4%
7ALPHABET INC-CL Cアメリカコミュニケーション・サービス1.2%
8ELI LILLY & COアメリカヘルスケア0.9%
9TAIWAN SEMICONDUCTOR MANUFACアメリカ情報技術0.9%
10BROADCOM INCアメリカ情報技術0.8%
参照:eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)運用レポート 最新の月報(2024年5月)|三菱UFJアセットマネジメント

たしかに1銘柄を購入すれば複数の国の株式へ分散投資を行うことはできますが、その大部分は米国株式となっているため、米国相場が下落すると大きな損失を被るリスクが考えられます。

おかねこ

本来の分散投資の意味は「値動きの異なる複数の金融商品を組み合わせてリスクを分散すること」にあるので、真の意味で分散投資ができているとは言えないのが実情です。

監修者

全世界株式は確かに23の先進国・地域と24の新興国・地域に分散投資をしているのですが、そのうち先進国が約90%、米国だけで約60%を占めています。
日本の国別割合は「2位」ではあるもののわずかに5.5%、その他の国の割合はもっと少なくなっています。米国が中心なので、米国が下落した際は、全世界も下落する環境ではあるのですが、米国株に偏っている実態は理解しておくとよいでしょう。

過去の実績をみるとS&P500よりも利回りが低い

全世界株式と同じく、投資信託の中で人気のある商品として「S&P500」という株価指数に連動したインデックスファンドがあります。

全世界株式と米国株式(S&P500)の値動きを比較すると、2018年末〜2022年12月末までの約4年間における値動きは、全世界株式よりも米国株式のほうが高い結果となっています。

全世界株式の投資先内訳は、米国株式が大部分を占めており、実質的に米国株式へ投資をしているのと大差ない状況です。

おかねこ

同じ米国株式へ投資をするなら、全世界株式よりも運用実績が優れている米国株式(S&P500)へ投資したほうが、より大きなリターンを得られる可能性があります。
これらの理由から、一部では全世界株式への投資はおすすめしないと言われています。

全世界株式には成長率が低い国や新興国などの株式も含まれている

全世界株式の投資先の内訳としては、米国株式がその大部分を占めていますが、少ない割合ながらも成長率が低い国や新興国などの株式も含まれています。

特に、全世界株式に含まれている新興国は政治や経済基盤が安定していないケースも多く、投資を行う上でリスクが高いと言わざるを得ないような投資信託も存在します。

また、全世界株式は株式のみで構成されていることも多いため、大多数を占める米国株式が下落した場合、その煽りで他の国の株価も影響を受けてしまう恐れもあります。

おかねこ

安定性や信頼性において、米国株式や先進国株に劣る部分が多いことから、全世界株式をおすすめしないという投資家もいるのです。

為替変動の影響が大きく実績が好調でも利益が目減りする可能性がある

全世界株式には、「為替ヘッジ」と呼ばれる為替変動リスクを抑えるための機能が設定されていないケースが一般的です。

為替ヘッジとは、日本円ベースで見た場合に、為替取引や先物取引を利用する際の為替変動による資産価値の変動を抑える仕組みのことを言います。

全世界株式は為替ヘッジが設定されておらず、その分のコストがかからないため、他の手数料や信託報酬が割安に設定されています。

一方、為替ヘッジが設定されていない状況で、円高時に日本円へ換金すると、たとえ全世界株式の運用実績が好調でも利益が目減りしてしまう場合があります。

おかねこ

為替ヘッジの有無によって為替変動の影響は大きく変わるため、その点を考慮して全世界株式をおすすめしない投資家もいます。

全世界株式を購入するメリットとは?

全世界株式を購入するメリットには、次の5つがあります。

  • 知識が少なくても始められる
  • 全世界へ分散投資できる
  • リバランスに悩む必要がない
  • 運用コストが低く抑えられる
  • 少額から始められる

知識が少なくても始められる

「投資を知らないから」とか「投資の知識がないから」という理由で、投資を始めることができないと思っている人もいるかもしれません。

全世界株式を購入することは、世界経済の動きに投資することと同様の効果が得られます。
経済分析や銘柄分析など、時間をかけて分析を行う必要がありません。

また、つみたて投資をすれば、買い時、売り時なども気にしなくて投資することができます。全世界株式なら投資に対する知識が少ない人でも、手間をかけずに簡単に投資を開始することができます。

全世界へ分散投資できる

投資のリスクを低減させる方法として、分散投資があります。

例えば、2024年8月に起きた日本の株価暴落ですが、この時に日本株しか持っていない場合には、大きな打撃を受けたことでしょう。しかし、全世界株式のように、他国にも分散投資をしていれば、暴落の影響を和らげることができます。

また、全世界株式なら新興国にも一定の配分をしていますので、先進国以上に成長する新興国経済の成長率も享受できます。

このように、全世界株式を購入することによって、リスクが低減される上に、世界経済の成長性も手に入れることが可能となるメリットがあります。

リバランスに悩む必要がない

投資で一番悩む点は、ポートフォリオの配分およびリバランスです。

全世界株式を購入すれば、株式に関しては自分でポートフォリオを組む必要はなく、世界中の株式に投資することができます。

全世界株式が対象とするインデックスは、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスもしくはFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスであることが一般的ですが、どちらのインデックスも4半期ごとにリバランスが行われます。つまり、自分でリバランスすることが不要になります。

全世界株式に投資することによって、余分な手間が大幅に軽減される点もメリットです。

運用コストが低く抑えられる

投資信託では、運用中の費用として運用管理費用(信託報酬)というコストがかかります。

全世界に投資をしようとして、いくつかの投資信託を組み合わせて運用しようとすると、それぞれに運用管理費用がかかり、割高な運用になってしまします。

一方、全世界株式を購入すれば、1つのインデックスに投資する商品を選ぶため、運用管理費用を抑えることができます。

実際、全世界株式の投資信託の運用管理費用は、すべての投資信託の中でも最安クラスにランクされるものが多く、コストパフォーマンス良く投資することができます。

少額から始められる

投資信託のメリットとして、少額から始められるというものがあります。

投資信託は多くの投資家からお金を集めて、運用を行うため、少額でも参加することができます。

投資信託の仕組み

もし全世界の株式をインデックス通りに実際に購入すれば、莫大な金額が必要となります。しかし全世界株式を購入すれば、SBI証券や楽天証券のようなネット証券なら100円からつみたて投資を始められる上、世界の株式市場のパフォーマンスを得ることができます。

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全世界株式をおすすめする人・おすすめしない人

全世界株式はどんな人におすすめ?

全世界株式の購入がおすすめなのは、全世界株式のメリットに魅力を感じる人です。全世界へ分散投資をしたり、自分でリバランスするのが面倒と思ったりする人は、全世界株式を購入すればメリットを感じることができるでしょう。

一方で、全世界株式は、大きく分散投資をしているので、景気が好調な地域へ集中投資する場合などと比較すると、利回り面では劣ることが多いです。また、国際通貨基金(IMF)の 見通しによれば、世界経済全体は今後2年間は年率3.2%~3.3%の成長が見込まれていますが、短期間に大きく経済が拡大するわけではないので、短期に利益を求める人には、全世界株式は不向きといえます。(2024年9月30日時点)

全世界株式をおすすめする人
  • 全世界への分散投資を望む人
  • リバランスを面倒と思っている人
全世界株式をおすすめしない人
  • 高利回りを求める人
  • 短期で利益を求める人

全世界株式に投資する時のポイント【初心者向け】

投資を始めたばかりの人が全世界株式に投資する際のポイントは、次の3つです。

  • スポット購入よりは積み立てで購入を
  • 他の商品と組み合わせる場合には比率に注意
  • 半年から1年に1回は残高を確認しよう

スポット購入よりは積み立てで購入を

例えば10万円のキャッシュを持っているときに、10万円で一度に全世界株式を購入することをスポット購入と言います。

株式市場が底値圏の場合はスポット購入もよいのですが、株式が高値圏内などにある時、例えば2024年8月にスポット購入しようとすると暴落の直前に購入し、その後の下落ですぐに損切りをするなども考えられます。

もし長期運用を考えているのなら、スポット購入よりは、購入時期を分散できる積み立てで購入した方が、短期的な下落リスクを軽減することができます。

他の商品と組み合わせる場合には比率に注意

全世界株式と他の商品を組み合わせる際には注意が必要です。

例えばS&P500に投資する商品と組み合わせた場合には、全世界株式で米国へ約60%、S&P500で100%を米国へ投資するため、両方の商品を同じ金額購入すると、米国の比率が全体の80%になってしまいます。

全世界株式と他の商品を組み合わせて購入する場合には、債券やREITなど違うカテゴリーへ投資する商品を選ぶのが良いでしょう。どうしても株式に投資する商品を選ぶのであれば、インデックス型ではなく、アクティブ型を選択することで、違う値動きになることが期待でき、リスクを軽減させることができます。

半年から1年に1回は残高を確認しよう

通常投資を行う際には、それぞれの商品が違った値動きをするので、半年や1年経つと、当初の比率から離れてしまうことがあります。これを当初の想定の比率に戻すことをリバランスと呼びます。

全世界株式を購入すれば、リバランスの必要はなく、ある意味、ほったらかし投資をすることができます。

ただし、現在の財産状況を理解しておくために半年から1年に1回は残高を確認するようにしましょう。別の資産に投資していれば、その資産とのリバランスも必要となります。

全世界株式と S&P500(米国株式)はどっちがおすすめ ?

全世界株式とS&P500(米国株式)のどちらの指数に連動する商品を購入した方が有利なのでしょうか?

まずは全世界株式とS&P500の過去のパフォーマンスを比較してみましょう。

指数リターン標準偏差(リスク)
全世界株式(MSCI ACWI)年率9.33%14.82%
S&P500年率12.61%15.26%
参照元:
国際通貨基金|世界経済見通し2024年7月改訂版
S&P 500 | S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
※2024年9月30日時点

過去のパフォーマンスを比較すると、リターンはS&P500の方が高く、標準偏差(リスク)は全世界株式の方が低くなっています。

つまり、過去10年間において、米国株式の成長は全世界株式の成長よりも大きかったと言えます。

一方で標準偏差(リスク)では、全世界株式の方が若干低くなっています。しかし、その差は小さく、全世界株式の方が明らかにリスクが低いというほどの差ではありません。

全世界株式においても米国の比率が約60%である点を考慮すれば、両インデックスの標準偏差に開きが少ないのも理解できると思います。もし2024年8月に日本で起きたような暴落が米国で起こった場合などはS&P500の方の下落率が大きくなると考えられますが、全世界株式でも下落は免れません。

監修者

個人の考え方や投資戦略、リスク許容度など、さまざまな指標によって異なりますが、基本的に全世界株式よりも積極的にリスクを取り、リターンを求めているのであれば、これまでリターンの高かった米国の「S&P500」などの株価指数に連動を目指す米国株インデックスファンドは候補に挙がります。

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まとめ

インデックスファンドへの投資における王道と言われる全世界株式は、国内・国外を問わず全世界の株式を対象とした投資信託のことを指します。

「全世界株式」という1つのパッケージの中に、さまざまな国の株式や金融商品が含まれているイメージで、低コストで自然に分散投資ができるため、多くの投資家から高い人気を博しています。

ただし、以下の理由から「全世界株式はおすすめしない」とされる論調があることも理解しておきましょう。

投資信託を含む金融商品への投資は、必ずしも利益を得られるという類のものではありません。

それぞれに一長一短の特徴があるので、それらを理解して慎重に検討を重ねてから資産運用へ取り組むようにしましょう。

株式会社400F オンラインアドバイザー 金子 智

金子 智

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