
生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(令和元年度)」によると、50代の男性の88.2%、女性は93.5%もの人たちが自身の老後生活に不安を感じています。(※1)
また、同調査では老後の生活資金として、公的年金だけでは不十分と考える男女が全世代で80%を超える結果となっており、50代に絞ると男性が81.3%、女性は85.4%となります。(※2)
これらのことから、間近に迫った老後の生活資金に対して、強い不安を抱えている50代の方々が大勢いることが伺えます。
老後の生活を豊かにするには、今後のライフイベントやそれにかかる費用など、大まかな概要を把握しておくことが大切です。また、50代からでも老後を見据えた貯金を始めるのに遅すぎることはありません。
今後起こり得るライフイベントとその費用感、50代の方々にもおすすめの貯金方法についてご紹介していきます。
参照※1 : 令和元年度「生活保障に関する調査」(令和元年12月発行)全体版 81ページ|生命保険文化センター
参照※2 : 令和元年度「生活保障に関する調査」(令和元年12月発行)全体版 83ページ|生命保険文化センター
50代の平均貯金額は1,199万円、中央値は260万円
はじめに、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」の統計データを参照して、各年代の平均貯金額をみていきましょう。
統計データでは「平均値」と「中央値」という2つの概念が登場しますが、それぞれが示す意味合いは次のように異なります。
- 平均値:複数の数を等分したときの値(例:0・0・6の3つの数字の平均値は2)
- 中央値:複数の数を順に並べたときの中央にくる値(例:0・0・6の3つの数字の中央値は0)
平均値は、全てのデータを当分に均したときの値を示しますが、一部の高所得者層によって数値が大幅に引き上げられてしまう可能性があります。
一方、中央値は全てのデータを少ない順に並べた場合のちょうど中央にくる値を示すため、私たちが普段からイメージする平均に近しい数値といえます。
令和4年度の調査データによると、50代の平均貯金額は1,199万円となっていますが、一方の中央値は260万円です。自身の貯金額と比較する際は、中央値の値と比較するのがよいでしょう。
年代別金融資産保有額割合(総世帯) | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
総世帯 | 全国 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | 70代 |
総数 | 7,500世帯 | 720世帯 | 972世帯 | 1,376世帯 | 1,390世帯 | 1,461世帯 | 1,581世帯 |
金融資産非保有 | 26.9% | 40.6% | 26.7% | 28.4% | 28.4% | 23.1% | 21.8% |
100万円未満 | 10.6% | 21.9% | 15.1% | 12% | 9.9% | 6.6% | 5.7% |
100~200万円未満 | 6.6% | 11% | 9.8% | 6.9% | 5.7% | 5.5% | 4% |
200~300万円未満 | 4.7% | 6.9% | 6.5% | 5.3% | 4.2% | 3.6% | 3.2% |
300~400万円未満 | 4.7% | 5.1% | 6% | 5.7% | 4.5% | 3.4% | 4.2% |
400~500万円未満 | 3% | 2.4% | 3.2% | 3.9% | 2.9% | 3.2% | 2.5% |
500~700万円未満 | 6.4% | 4.6% | 8.6% | 6.7% | 4.5% | 5.5% | 7.9% |
700~1,000万円未満 | 5.6% | 2.8% | 6.1% | 6.3% | 5.6% | 5.6% | 5.9% |
1,000~1,500万円未満 | 7.1% | 1.4% | 6% | 7.5% | 7.7% | 8% | 8.9% |
1,500~2,000万円未満 | 4.5% | 0.3% | 3.6% | 3.5% | 5.5% | 5.1% | 6.7% |
2,000~3,000万円未満 | 6.1% | 0.3% | 3.4% | 4.9% | 6.4% | 8.2% | 9.4% |
3,000万円以上 | 10.7% | 0.7% | 2.4% | 5.2% | 10.5% | 19.2% | 17.6% |
無回答 | 3% | 2.1% | 2.7% | 3.8% | 4.2% | 2.8% | 2.2% |
平均 | 1,150万円 | 185万円 | 515万円 | 785万円 | 1,199万円 | 1,689万円 | 1,755万円 |
中央値 | 280万円 | 20万円 | 150万円 | 200万円 | 260万円 | 552万円 | 650万円 |
参照 : 家計の金融行動に関する世論調査[総世帯調査] 令和4年調査結果 各種分類別データ シート4|知るぽると 金融広報中央委員会
日本では年齢を重ねるにつれて収入が上がる傾向が強く、各年代と比較しても50歳代の平均貯金額や中央値は高い数値となっています。
一方、60歳代以降も平均貯金額や中央値は上がっていき、3,000万円以上の金融資産を保有する世帯が全体の2割弱まで増えています。ただし、上記のデータは総世帯の平均値となっており、夫婦2人暮らしや家族がいる世帯、一人暮らしなど、ライフスタイルによっても実際の貯金額は異なります。
そこで、二人以上世帯と単身世帯における50代の平均貯金額についても確認していきましょう。
50代の二人以上世帯の場合
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、50代の二人以上世帯の平均貯金額は、次のとおりです。
50代の二人以上世帯の金融資産保有額割合 | |
---|---|
二人以上世帯 | 割合 |
金融資産非保有 | 24.4% |
100万円未満 | 9.3% |
100~200万円未満 | 5.8% |
200~300万円未満 | 4.2% |
300~400万円未満 | 5.1% |
400~500万円未満 | 3.2% |
500~700万円未満 | 5% |
700~1,000万円未満 | 5.7% |
1,000~1,500万円未満 | 8.8% |
1,500~2,000万円未満 | 6% |
2,000~3,000万円未満 | 7.2% |
3,000万円以上 | 10.8% |
無回答 | 4.6% |
平均 | 1,253万円 |
中央値 | 350万円 |
参照 : 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和4年調査結果 各種分類別データ シート4|知るぽると 金融広報中央委員会
二人以上世帯の平均貯金額は約1,253万円、中央値は約350万円です。一切の金融資産を持たない方々を含めると、50代で貯金が100万円未満の世帯割合は全体の3割を超える結果となっています。
一方で、1,000万円以上の貯金がある世帯割合も3割を超えていますが、本データは夫婦2人暮らし世帯のみならず、子どもがいる世帯も含まれています。
子どもの教育資金は「人生の3大支出(教育費用・住居費用・介護費用)」に数えられるほど高額な費用となるため、その支払いの有無によって貯金額に大きな差があると考えられます。
50代の単身世帯の場合
一方、50代の単身世帯における平均貯金額についても確認していきましょう。同じく金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」を参照すると、単身世帯の平均貯金額は次のとおりです。
50代の単身世帯の金融資産保有額割合 | |
---|---|
単身世帯 | 割合 |
金融資産非保有 | 39.6% |
100万円未満 | 11.5% |
100~200万円未満 | 5.5% |
200~300万円未満 | 4.4% |
300~400万円未満 | 3% |
400~500万円未満 | 1.9% |
500~700万円未満 | 3% |
700~1,000万円未満 | 5.5% |
1,000~1,500万円未満 | 4.6% |
1,500~2,000万円未満 | 4.1% |
2,000~3,000万円未満 | 4.1% |
3,000万円以上 | 9.6% |
無回答 | 3.3% |
平均 | 1,048万円 |
中央値 | 52.5万円 |
参照 : 家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査] 令和4年調査結果 各種分類別データ シート4|知るぽると 金融広報中央委員会
50代の単身世帯における平均貯金額は約1,048万円、中央値は52.5万円です。二人以上世帯の平均貯金額が1,253万円、中央値が350万円であることを踏まえると、単身世帯よりも二人以上世帯のほうが貯金を強く意識していることが伺えます。
また、金融資産非保有世帯を含めると、50代で100万円未満の貯金額の世帯割合は全体の約半分と、二人以上世帯に比べ得て非常に高い数値となっています。
年収別の貯金額
「収入は増えないのに、支出は増える一方でなかなか貯金ができない…」とお困りの方も多いのではないでしょうか。今度は、角度を変えて、全年齢での年収別の貯金額割合を確認していきましょう。
全年齢・年収別の平均貯蓄額(令和4年) | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
年収別 | 収入はない | 300万円未満 | 300~500万円未満 | 500~750万円未満 | 750~1,000万円未満 | 1,000~1,200万円未満 | 1,200万円以上 |
金融資産非保有 | 62.6% | 37.5% | 23.6% | 17.6% | 13% | 12.5% | 14% |
100万円未満 | 9.4% | 14.6% | 11.7% | 8% | 5.5% | 4.9% | 3.1% |
100~200万円未満 | 2.9% | 7% | 7.7% | 7.2% | 4.2% | 6.1% | 1.7% |
200~300万円未満 | 2.1% | 5.4% | 5.2% | 4.8% | 3.7% | 1.5% | 2.4% |
300~400万円未満 | 3.4% | 4.3% | 5.2% | 5.8% | 4% | 3.4% | 2.7% |
400~500万円未満 | 0% | 2.1% | 3.6% | 4.8% | 1.8% | 3% | 2.7% |
500~700万円未満 | 2.4% | 5.4% | 7.4% | 7.7% | 8% | 3.8% | 4.1% |
700~1,000万円未満 | 1.3% | 3.6% | 6.1% | 7.2% | 8.4% | 9.1% | 5.1% |
1,000~1,500万円未満 | 1.8% | 4.3% | 7.6% | 8.5% | 13.2% | 12.2% | 7.9% |
1,500~2,000万円未満 | 0.3% | 3.2% | 4.1% | 6.2% | 8% | 6.5% | 6.5% |
2,000~3,000万円未満 | 2.4% | 3.8% | 5.7% | 7.5% | 10.5% | 9.9% | 13% |
3,000万円以上 | 2.1% | 6% | 9.9% | 12% | 16.2% | 25.1% | 33.6% |
無回答 | 9.4% | 2.9% | 2.3% | 2.8% | 3.3% | 1.9% | 3.1% |
平均 | 260万円 | 650万円 | 974万円 | 1,319万円 | 1,873万円 | 2,687万円 | 3,595万円 |
中央値 | 0万円 | 50万円 | 300万円 | 500万円 | 967万円 | 1,063万円 | 1,800万円 |
参照 : 家計の金融行動に関する世論調査[総世帯調査] 令和4年調査結果 各種分類別データ シート4|知るぽると 金融広報中央委員会
上記の結果を見ると、年収が300万円を超えると平均貯金額が1,000万円近い金額となり、300万円未満の人たちと比べて、中央値は約6倍にまで増えます。
以降も年収が増えるにつれて、平均値、中央値ともに増えていき、年収が1,000万円を超えると平均値は2,000万円を超え、中央値も1,000万円を超えてきます。
収入が多ければ多いほど、貯金に回せる金額も増えると考えられますが、年収が1,000万円を超えていても、17%前後の世帯は金融資産保有額が100万円未満という結果です。
一方、実は年収が300万円未満でも約17%もの世帯が1,000万円以上の貯金に成功しています。つまり、年収が少なくても、貯金に取り組む姿勢によって、老後を豊かに暮らすのに十分な額の貯金を作ることができるということです。
50代の約2〜3割は貯金がゼロ
50代で貯金ゼロの世帯割合は、二人以上世帯で24.4%、単身世帯で39.6%となっています。
50代単身世帯の金融資産保有額割合 | ||
---|---|---|
項目 | 二人以上世帯 | 単身世帯 |
金融資産非保有世帯 | 24.4% | 39.6% |
金融資産保有世帯 | 71.0% | 57.1% |
無回答 | 4.6% | 3.3% |
平均値 | 1,253万円 | 1,048万円 |
中央値 | 350万円 | 52.5万円 |
参照 : 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和4年調査結果 各種分類別データ シート4|知るぽると 金融広報中央委員会
参照 : 家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査] 令和4年調査結果 各種分類別データ シート4|知るぽると 金融広報中央委員会
二人以上世帯の場合は子どもの教育資金やマイホームのローン支払いなど、高額な支払いが続くことからなかなか上手く貯金できない世帯が多いことが伺えます。
単身世帯は比較的自由に使えるお金が多いことから、今の生活を快適に過ごすためにそこまで貯金を意識していない世帯が多いものと考えられます。

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老後に向けた貯蓄の考え方
さまざまな統計データから50代の平均貯金額について確認してきました。 自身の貯金額と比較して、より老後への不安が強くなってしまった方も少なくないかもしれません。
ただし、上記でご紹介したデータはあくまで全国平均であるため、お住いの地域やライフスタイル、個々人の考え方などによってお金の使い方は異なります。
ここまでのデータは、ご自身がこれからどれくらいの貯金が必要かを考えるための目安として、参考程度に留めておくようにしましょう。
さて、そこで疑問に浮かぶのが「実際、どれくらい貯金をすればよいの?」という点かと思います。 基本的に、老後に向けた貯蓄の考え方は「老後の支出 ― 老後の収入」によって、不足する分の金額を貯金しておく必要があります。
たとえば、総務省統計局の「家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)家計の概要」では、65歳以上の夫婦のみ、65歳以上の単身世帯における家計収支の平均値を公開しています。
65歳以上無職世帯の月額家計収支(2021年) | ||
---|---|---|
項目 | 二人以上世帯 | 単身世帯 |
実収入(社会保障給付を含む) | 236,576円 | 135,345円 |
消費支出 | 224,436円 | 132,476円 |
非消費支出(税金、社会保険料、借金利子など) | 30,664円 | 12,271円 |
不足分 | 18,525円 | 9,402円 |
参照 : 家計調査 収支項目分類の基本原則|総務省統計局
上記の結果をみると、年間で12〜24万円(月額1〜2万円)程度の不足分が発生していることがわかります。
厚生労働省の「令和3年簡易生命表の概況」によると、日本人の平均寿命は男性が約81歳、女性が約88歳です。つまり、65歳から平均寿命までの期間を考慮すると、老後の生活資金として192万〜552万円が不足する計算となります。
なお、この不足分は65歳以降、普通に生活するだけで足りなくなると考えられる金額で、老後の生活資金を豊かなものにするためにはより多くの貯金額が必要です。50代のライフイベントと必要になる費用の一例を確認していきましょう。
50代のライフイベントと必要になるお金
50代のライフイベントと必要になる費用の一例は、次のとおりです。
これらについても、統計データを用いながら、具体的にどれくらいの費用が必要なのかを解説します。
子どもの進学と自立
文部科学省の「子供の学習費調査(令和3年度)」によると、幼稚園〜高等学校(全日制)を卒業するまでの学習費総額は、次のとおりです。
子供の学習費総額(幼稚園〜高等学校卒業まで) | ||
---|---|---|
区分 | 公立 | 私立 |
幼稚園 | 165,126円 | 308,909円 |
小学校 | 352,566円 | 1,666,949円 |
中学校 | 538,799円 | 1,436,353円 |
高等学校(全日制) | 512,971円 | 1,054,444円 |
参照 : 結果の概要-令和3年度子供の学習費調査|調査結果の概要|学校種別学習費総額の推移(表1参照)|文部科学省
上記の統計データは年額の平均値なので、一般的な幼稚園や中学校、高等学校は3年間、小学校は6年間であることを踏まえると、学習費総額は驚くほどに高額な支出となります。
また、子どもが大学に入学することを考慮すると、さらに高額な費用が必要です。日本政策金融公庫の「教育費に関する調査結果」では、令和3年度における大学の入学費用、年間の学習費総額の調査結果を公開しています。
子供の学習費総額(幼稚園〜高等学校卒業まで) | |||
---|---|---|---|
区分 | 国公立大学 | 私立大学(文系) | 私立大学(理系) |
入学費用 | 672,000円 | 818,000円 | 888,000円 |
在学費用(年額) | 1,035,000円 | 1,520,000円 | 1,832,000円 |
これらはあくまで平均値で、お住いの地域や通学先の大学によって金額は大きく変動します。とはいえ、これまでの調査結果を考慮すると、子どもの教育資金が人生の3大支出に数えられる理由もおわかりいただけるのではないでしょうか。
親の介護費用
50代以降になると、親の介護費用もかかります。生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」によると、介護費用の平均月額は約8.3万円、さらに一時費用(住宅改造や介護用ベッドの購入など一時的にかかった費用)の合計平均は74万円となっています。(※1)
また、同調査では介護を始めてからの期間平均が約61ヶ月としているので、これらを踏まえると介護費用として約580万円が必要です。
参照※1 : 2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査<速報版> 93,96ページ|生命保険文化センター
親の相続や葬儀費用
両親が亡くなった際、遺産相続や葬儀費用も発生します。相続の際に発生する相続税は、遺産総額から基礎控除額を差し引いた課税遺産総額に対し、民法で定められている10〜55%の税率をかけて算出されます。
相続税の税率 | ||
---|---|---|
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | – |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
また、遺産相続時には、死亡診断書や戸籍謄本などの取得費用も発生します。一方、葬儀費用は、地域や規模によって100〜200万円程度と相場が変動しますが、一部の生命保険では、保障内容に葬儀費用の補填が含まれている場合があります。
老後資金
生命保険文化センターの「令和元年度 生活保障に関する調査<速報版>」によると、夫婦2人が考える老後の最低日常生活費は、平均22.1万円となっています。(※1)
また、ゆとりのある老後生活を送るための費用としては、上記金額に加えて月額で約14万円の上乗せが必要と考える世帯が多いようです。
つまり、ゆとりのある老後生活を送るためには年額で433万円、65歳から日本人の平均寿命を全うするまでの約20年間を考慮すると、8,660万円(433万円×20年)の資金が必要となります。
世帯によって必要な金額は異なりますが、ゆとりのある老後生活を送るためには多額の貯金が必要です。
そのためには、50代の今からでも、積極的に貯金に取り組む必要があるといえるでしょう。
参照※1 : 令和元年度 生活保障に関する調査<速報版>39,40ページ|生命保険文化センター
50代が効率よく貯金する方法
50代が効率よく貯金をする方法としては、主に次の5つが挙げられます。
NISA・つみたてNISA
NISA・つみたてNISAは、少額から金融投資を始めることができ、年間の非課税枠の範囲内なら、得られた利益は全額非課税となる制度です。
一般NISAとつみたてNISAでは、それぞれで投資可能な上限額や非課税保有期間が次のように定められています。
期間 | 2023年まで | 2024年以降 | ||
---|---|---|---|---|
区分 | 一般NISA | つみたてNISA | 成長投資枠 | つみたて投資枠 |
非課税保有期間 | 5年間 | 20年間 | 無期限化 | 無期限化 |
年間非課税枠 | 120万円 | 40万円 | 240万円 | 120万円 |
非課税保有限度額 | – | – | 1,800万円(成長投資枠は1,200万円まで) | |
投資可能商品 | ・上場株式 ・ETF ・公募株式投信 ・REIT等 | ・長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託 (※金融庁への届け出が必要) | ・上場株式 ・投資信託等 | ・長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託 (※金融庁への届け出が必要) |
払出し制限 | なし | |||
対象年齢 | 20歳(※2023年1月以降は18歳以上) | 20歳※2023年1月以降は18歳以上 | 18歳以上 | 18歳以上 |
従来のNISA制度では、運用可能期間が5年や20年と決まっていましたが、2024年以降から始まる新NISAでは、非課税保有期間が無期限化されます。
つまり、50代から始めても決して遅すぎることはなく、将来を見据えた貯金をしながら、税金面で大きなメリットが得られることが特徴のおすすめの制度といえます。
なお、現行のNISA・つみたてNISAの買付・積立投資は2023年で終了となりますが、従来の非課税保有期間は2024年以降も別枠で継続されます。
2024年以降は最大1,800万円までの非課税枠が利用できますが、2023年までにNISA制度を利用し始めれば、従来の非課税枠を追加で利用できてさらに効率よく投資が可能です。現行のNISA制度を活用していない50代の方は、これを機にぜひ前向きにご検討ください。
iDeCo
iDeCo(イデコ)は「個人型確定拠出年金」とよばれ、老後生活に向けた資産形成を目的とした運用方法です。
iDeCoでは、毎月の掛金が全額所得控除の対象で、非課税での運用が可能、引き出す際にも大きな所得控除が受けられるなどの大きなメリットがあります。
一方、iDeCoで運用した資産は60歳になるまで一切引き出すことができず、引き出すためには10年以上の通算加入者等期間が必要なため、これまでは50代からiDeCoを始めるのは遅いとされてきました。
ですが、iDeCoは2022年4月1日からの税制改正によって、資産の引き出し期間が60〜75歳(改正前は70歳)までに拡大されたため、50代からでもiDeCoのメリットを活かしやすくなっています。
また、同年の制度改正に伴い、勤務先が代わりに掛け金を拠出してくれる「企業型DC(企業型確定拠出年金)」との併用も可能となっています。50代であっても活用しやすい制度内容に変更されているので、まだiDeCoを活用していない50代の方は、これを機にぜひ検討してみましょう。
財形貯蓄制度
財形貯蓄制度は、一定金額を勤務先の給料から天引きの形で、企業が提携する銀行口座へ自動的に貯金できる制度です。
毎月の給与から自動的に先取り貯金ができるので、わざわざ貯金用口座にお金を移す手間や手数料がかからず、お金の使いすぎを予防できます。
また、財形貯蓄制度には、貯金の目的によって「住宅用」「年金用」「その他」の3つに分類され、場合によっては税負担の軽減効果が期待できたり、住宅ローン融資が受けられたり、さまざまなメリットがあります。
制度の仕様上、財形貯蓄制度を導入済みの企業で勤務している方しか利用できませんが、手元のお金をついつい使い込んでしまう方にはおすすめの制度です。
積立保険
積立保険(貯蓄型保険)は、終身保険や養老保険、学資保険など、将来的に払い込んだ保険料が返ってくる可能性がある保険商品全般の総称です。
- 終身保険:解約時に解約返戻金が受け取れる
- 養老保険:死亡保障を備えながら、満期を迎えた際に満期保険金が受け取れる
- 個人年金保険:一定期間まで保険料を払い込み、以降は一定額の年金を定期的に受け取れる
- 学資保険:子供が一定年齢に達するとお祝い金が受け取れる
万一のときの死亡保障を備えつつ、毎月の保険料という形で保険会社へ貯金していくことが可能です。貯蓄性のある保険の特徴として、一般的な掛け捨て型保険に比べて保険料が割高なのが欠点として挙げられます。
現在の家計を圧迫しては元も子もないので、毎月の収支状況とのバランスを見ながら、掛け捨て型保険と積立保険を併用するのがおすすめです。
固定費の見直し
50代の方が貯金を始めるには、これまでの固定費を見直して支出を減らす工夫をすることも大切です。一般的な固定費の一例は以下のとおりです。固定費を見直す際の参考にしてみてください。
- 居住費(家賃、住宅ローン、固定資産税など)
- 水道光熱費(基本料金部分)
- 通信費(インターネット代、スマホ代)
- 保険料(生命保険、損害保険など)
- 自動車維持費(車検、自動車ローン、駐車場代など)
- 月額サービス(定期購入・サブスクリプション)
また、上記以外にも、外食が多い場合はできるだけ自宅で自炊をしたり、可能な範囲でゴルフや会食などを控えたり、日々のお金の使い方を振り返りましょう。
加入したまま放っておいた生命保険などがある場合は、ほぼ同じ保障内容でより保険料が安い商品が登場しているかもしれません。
自分や家族だけでは固定費の見直しが難しい場合は、プロの専門家であるファイナンシャル・プランナーへの無料相談を利用することも検討してみてください。
まとめ
50代の平均貯金額は1,199万円、中央値は260万円です。 自身の貯金額と比較して、さらに老後への不安が強まった方も少なくないのではないでしょうか。
ですが、昨今の日本人の平均寿命は男女ともに80歳を超えており、今後も平均寿命は伸びていくと考えられています。 人生100年時代とよばれる時代に突入しており、50代からでも貯金を始めることは決して遅くありません。
老後に向けた貯蓄の考え方は「老後の支出 ― 老後の収入」によって、不足する分の金額を貯金しておく必要があります。 本記事でご紹介した内容を参考にして、ゆとりのある老後生活を目指して積極的に貯金へ取り組んでみてください。

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オカネコマガジン編集部

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