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生命保険の解約返戻金・満期保険金とは? 種類と受け取りにかかる税金を分かりやすく解説します

記事更新日: 2024年05月02日生命保険の解約返戻金・満期保険金とは? 種類と受け取りにかかる税金を分かりやすく解説します
監修者
株式会社400F オンラインアドバイザー 黒木信一郎株式会社400F オンラインアドバイザー
黒木 信一郎
公的保険アドバイザー / AFP(日本FP協会認定) / TLC(生保協会認定FP)

解約返戻金とは

解約返戻金の仕組み

解約返戻金とは、生命保険を解約した際、契約者に対して保険会社から支払われるお金のことです。

すべての生命保険に解約返戻金があるわけではなく、終身保険や養老保険、個人年金保険といった「貯蓄型保険」を解約した場合に限り、解約返戻金が受け取れます。

解約返戻金として支払われる金額は、解約までに払い込んだ保険料に一定の利率を乗じた金額となるため、必ずしも払い込んだ保険料全額が返還されるわけではありません。

一方で、契約年数が長くなるほど利率は高くなる傾向にあり、場合によっては払い込んだ保険料以上の解約返戻金を受け取れる場合もあります。

ただし、解約返戻金は生命保険の解約時にのみ支払われるお金なので、それ以降は一切の保障が受けられない状態となってしまいます。

解約返戻金を受け取りたいがために、安易に生命保険を解約することがないように気をつけましょう。

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多くの場合、解約返戻金は払込保険料の合計額よりも少ない金額となります。

特に、保険契約から短期間での解約については解約返戻金がまったくないか、あってもごくわずかとなってしまうことがあります。

また、解約に伴って保障(保険金額)も無くなってしまうため、解約するにあたっては注意が必要です。

解約返戻金の種類

解約返戻金には、大きく分けると3つの種類が存在します。

従来型

終身保険の仕組み

従来型の解約返戻金は、払い込む保険料が増えるにつれて、受け取れる解約返戻金の金額も増えていくタイプの生命保険です。

毎月の保険料を保険会社に積み立てていくイメージで、ゆるやかに解約返戻金も上昇していきます。

保険料の払込期間が満了する頃には、払い込んだ保険料と解約返戻金が同程度となりますが、他の種類に比べて毎月の保険料負担が大きくなりやすいことが特徴です。

低解約返戻金型

低解約返戻金型終身保険の仕組み

低解約返戻金型は、契約時に定めた保険料の払込期間中に限り、従来型よりも受け取れる解約返戻金が低く抑えられているタイプの生命保険です。

保険料の払込期間中は多くても7割程度の解約返戻金に設定されていますが、その代わり、従来型に比べて割安な保険料に設定されています。

保険料の払込期間満了後は、それまで低く抑えられていた解約返戻金が一気に増額され、場合によっては払い込んだ保険料以上の解約返戻金を受け取れる可能性があります。

従来型よりも保険料負担を減らしつつ、一定の保障を備えるのと同時に将来の貯蓄へも取り組めることが特徴です。

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低解約返戻金型の保険は、保険料払込期間中の解約返戻金額を低くすることで、低解約返戻金型ではない保険よりも保険料を抑えることができます。

また、保険料払込期間満了を過ぎると解約返戻金が上昇するという特徴を活用し、保険料の払込期間を短期(10年払込や15年払込など)にすることで、その後の資金需要に合わせた、学資保険代わりの将来のお子様の教育費用を目的として用いられるケースもあります。

無解約返戻金型

無解約返戻金型は解約返戻金がないタイプ、または極めて少額の解約返戻金が受け取れるタイプの生命保険です。

解約時に返戻金が受け取れない代わりに、毎月の保険料負担は3種類の中で最も低く抑えられています。

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解約返戻金をなくすことで保険料が割安に設定されており、 保険期間を通じて解約返戻金がないため、通常の保険より安い保険料で保障を備えることができます。

定期保険や医療保険などの掛け捨て保険の多くは、無解約返戻金型となっています。

解約返戻金はいくら受け取れる?

解約返戻金として受け取れる金額は、保険会社や保険商品ごとで異なる「解約返戻率」で計算されます。

解約返戻金の計算式
  • 解約返戻金=払込保険料総額×解約返戻率
  • 解約返戻率=解約返戻金÷払込保険料総額×100

たとえば、解約するタイミングでの解約返戻率が100%の場合、払い込んだ保険料の総額が100万円の場合は100万円×100%=100万円の解約返戻金が受け取れます。

一方、払込保険料の総額が100万円の生命保険を、解約返戻率が90%のタイミングで解約してしまうと、100万円×90%=90万円の解約返戻金しか受け取れず、元本割れを引き起こしてしまいます。

低解約返戻金型終身保険における解約返戻金のシミュレーションをまとめたので、参考にしてください。

例:低解約返戻金型終身保険のシミュレーション(死亡保障1,000万円、保険料20,000円/月、払込期間満了60歳)
契約期間年齢死亡保障額払込保険料総額解約返戻率解約返戻金差額
5年35歳10,000,000円1,200,000円63.0%756,000円-444,000円
10年40歳10,000,000円2,400,000円67.2%1,612,800円-787,200円
15年45歳10,000,000円3,600,000円67.9%2,444,400円-1,155,600円
20年50歳10,000,000円4,800,000円68.6%3,292,800円-1,507,200円
25年55歳10,000,000円6,000,000円69.4%4,164,000円-1,836,000円
30年60歳10,000,000円7,200,000円70.4%5,068,800円-2,131,200円
31年61歳10,000,000円7,440,000円100.8%7,499,520円+59,520円
35年65歳10,000,000円8,400,000円101.9%8,559,600円+159,600円
40年70歳10,000,000円9,600,000円103.1%9,897,600円+297,600円
※解約返戻率は各保険商品によって異なります。

このような低解約返戻金型終身保険に加入した場合、解約返戻率が100%を上回る年齢(契約期間31年)以降になると、払い込んだ保険料以上の解約返戻金が受け取れるようになります。

一方、保険料の払込期間中は解約返戻率が低めに設定されているため、生命保険を解約してしまうと基本的に元本割れを起こしてしまいます。

特に保険料の払込期間を満了する60歳時点で解約してしまうと、払い込んだ保険料と解約返戻金の差額が最も大きくなってしまうので注意が必要です。

上記はあくまでシミュレーションですが、基本的な仕組みとしてはどの低解約返戻金型終身保険も同じです。

解約返戻金がある生命保険は、保険商品のパンフレットなどに必ず解約返戻率が記載されているので、比較検討する際は忘れずに確認するようにしましょう。

解約返戻金にかかる税金

解約返戻金は、一般的には一時金として大きな金額をまとめて受け取ることになります。

支払った保険料の総額より解約払戻金が多かった場合、その差額に対して所得税(一時所得)が発生する場合があるので気をつけましょう。

所得税(一時所得)の計算式
  • 一時所得の金額=総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除50万円
  • 所得税=一時所得の金額÷2×所得税率

    ※営利目的ではない一時所得が他にもある場合はそれらも合算して計算を行います
    参照:No.1490 一時所得|国税庁

たとえば、払い込んだ保険料総額が1,000万円の場合、受け取った解約返戻金が1,050万円以下なら所得税(一時所得)は課税されません。

ただし、解約返戻金以外にも営利目的ではない一時所得がある場合は、それらも合算して所得税が計算される点は覚えておきましょう。

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解約返戻金を誰が受け取るのか、いくら受け取るのか、いつ受け取るのか、それぞれで税の種類や税率、適用される控除など様々な条件が異なってきます。

どのような目的で、何のために受け取るのかを事前に明確化しておくことが重要です。

解約返戻金の受取人が契約者以外の場合は「贈与税」が発生

解約返戻金は、原則として生命保険の契約者が受け取ることになります。

ただし、契約者(保険料を負担する方)と解約返戻金の受取人が異なる場合は、課税区分が贈与税に変わります。

解約返戻金の受け取りで贈与税が発生する場合の計算式

他の収入の有無などによって異なるものの、一般的には所得税率よりも贈与税率のほうが税率は高めに設定されています。

所得税と贈与税のどちらが課税されるかによって納税額は大きく変動することを覚えておきましょう。

解約返戻金の振込時期

解約返戻金は、解約手続きが完了してから概ね1週間程度で指定した口座に振り込まれます。

基本的には、保険会社に解約の旨を伝えた後、送られてくる解約書類に必要事項を記入して保険会社へ返送すれば解約の手続きは完了です。

インターネット経由で契約した生命保険の場合は、オンラインで解約手続きができる場合もあります。

事前に保険会社の公式サイトや保険窓口、申込書類の控えなどを確認しておきましょう。

満期保険金とは

満期保険金の仕組み

満期保険金は、保険契約の満期を迎えた際に保険会社から支払われるお金のことです。

保険商品によっては払い込んだ保険料以上の満期保険金が支払われる場合もありますが、全ての保険商品に満期保険金があるわけではありません。

具体的にいうと、生命保険には「貯蓄型保険」と「掛け捨て型保険」の2種類が存在し、それぞれで保険契約における「満期」の定義が異なります。

貯蓄型保険と掛け捨て型保険の「満期」の定義
  • 貯蓄型保険:保険期間が終了する時期、または保険料の払込期間が終了する時期(=保険契約は続いたまま)
  • 掛け捨て型保険:保障期間が終了する時期。それ以降は保険契約の更新または解約を行う必要がある

一般的に、満期保険金が受け取れるのは貯蓄型保険のみで、保険料が割安な掛け捨て型保険で満期保険金が支払われることはありません。

また、貯蓄型保険には上述の「解約返戻金」が設けられているケースが多いですが、解約返戻金と満期保険金には次のような違いがあります。

解約返戻金と満期保険金の違い
  • 解約返戻金:保険契約を途中で解約した際に支払われるお金
  • 満期保険金:保険期間が満了を迎えた際に支払われるお金

満期保険金が受け取れる生命保険の代表例としては「学資保険」と「養老保険」の2種類が挙げられます。

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保険期間の満了(保険料払込期間も同じ)を迎えると、死亡保険とほぼ同額の満期保険金が受け取れるため、期間満了前に解約してしまうと保険料払込金額を下回ってしまうケースもあります。

そのため、保険期間や保険金額の設定など中長期的に継続可能な、無理のない範囲で設定することが大切です。

学資保険

学資保険の仕組み

学資保険は、子どもの教育資金に備えるための生命保険です。

子どもの年齢が契約時に定めた年齢に達すると、保険会社からお祝い金や満期保険金が支払われます。

また、保険料の払込期間中に契約者(親)が死亡した場合、お祝い金や満期保険金はそのままに、それ以降の保険料は払込が免除されることが特徴です。

子どもの教育資金は長い人生の中でも高額な支出のひとつに数えられるため、学資保険に加入していれば、少なくとも子どもの教育資金は確保できます。

昨今では低金利の影響を受けて利率は低めに設定されていますが、保険会社によっては払い込んだ保険料以上の保険金が受け取れる学資保険も存在します。

養老保険

養老保険の仕組み

養老保険は、死亡保障を備えながら満期保険金も付いている生命保険です。

保険料の払込期間が満了を迎えると、契約時に定めた死亡保険金とほぼ同額の満期保険金を受け取れます。

万一のリスクに備えながら、将来を見据えた貯蓄にも同時に取り組めることが養老保険の最大の特徴です。

一方、同じ保障内容で比較した場合、通常の終身保険や定期保険よりも保険料が割高で、契約更新ができないケースも少なくありません。

満期保険金を受け取ったタイミングで以降は一切の保障が受けられない状態となってしまうため、養老保険だけではなく、定期保険や終身保険も活用すると、もしものときも安心です。

解約返戻金がある生命保険の貸付制度

保険会社や保険商品によっては、解約返戻金の一部を保険会社から借り入れできる制度があります。

これらの制度を利用することで、保険を解約せず、保障は継続したまま保険会社からお金を借り入れることができますが、それぞれの制度にメリット・デメリットがあるため、利用する際はしっかり検討して行うようにしましょう。

自動振替貸付制度

自動振替貸付制度とは、保険料の支払いが困難となった場合、解約返戻金の一部を保険料へ自動的に振り替えてくれる制度です。

一般的に、保険料の支払いを滞納した場合、保険料払込猶予期間が設けられ、その期間中に保険料を払い込めないと保険契約が失効してしまいます。

自動振替貸付制度がある生命保険に加入していれば、仮に保険料払込猶予期間を過ぎてしまっても、解約返戻金の一部が保険料へ振替されるため、保険契約が失効にならずに済みます。

ただし、本制度はあくまで貸付なので、未返済のまま満期を迎えた際や解約をする際には、立て替えられた金額と金利分が満期保険金や解約返戻金から差し引かれる点には注意が必要です。

契約者貸付制度

契約者貸付制度は、解約返戻金や満期保険金の一部を保険会社から借り入れできる制度のことです。

解約返戻金や満期保険金を前借りするイメージで、保険契約を解約せずにまとまった金額を用意できることが特徴です。

ただし、解約返戻金や満期保険金がある生命保険でも、契約者貸付制度が必ずしも利用できるわけではありません。

また、あくまで保険会社に借金をする形となるため、保険を契約した時点で設定された金利が発生してしまいます。

返済をしないまま期間が経過してしまうと利息が膨らみ、借入金額+利子分が解約返戻金や満期保険金の範囲を超えてしまうと、保険契約が失効する恐れがあります。

緊急時に契約者貸付制度を利用する場合は、返済計画も視野に入れた上で活用することを心がけましょう。

まとめ

生命保険には様々な種類の保険商品が登場していますが、中には払い込んだ保険料が「解約返戻金」や「満期保険金」として、将来的に返還されるタイプがあります。

解約返戻金と満期保険金の違い
  • 解約返戻金:保険契約を途中で解約した際に支払われるお金
  • 満期保険金:保険期間が満了を迎えた際に支払われるお金

満期保険金は死亡保障と同額の保険金を受け取れるケースが多く、解約返戻金はそれまでに払い込んだ保険料に解約返戻率を乗じた金額が支払われます。

これらの返戻金が受け取れる保険商品は「貯蓄型保険」と呼ばれており、一般的な掛け捨て型保険に比べて保険料負担は割高です。

ですが、払い込んだ保険料以上の解約返戻金が受け取れる可能性があるなどのメリットもあるため、万一の保障を備えながら将来を見据えた貯蓄にも取り組みたい方は、検討の余地があるといえます。

なお、解約返戻金と満期保険金は、どちらも受け取ったタイミング以降は、一切の保障が受けられなくなる点に注意しましょう。

株式会社400F オンラインアドバイザー 黒木信一郎

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オカネコ保険比較 編集部

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オカネコ保険比較は「オカネコ」を運営する株式会社400F(フォーハンドレッド・エフ、本社:東京都中央区、代表取締役社長:中村 仁)が運営、デジタル技術を駆使し、保険選びをシンプルで分かりやすく、そして便利にすることで、各人が自身に合った保険を見つけられるよう努め、手続きの煩雑さを減らすことを目指しています。

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