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就業不能保険はうつ病が保障対象外? もしもに備えて知っておくべき公的支援制度を一挙紹介

記事更新日: 2025年01月17日就業不能保険はうつ病が保障対象外? もしもに備えて知っておくべき公的支援制度を一挙紹介

監修者 株式会社400F オンラインアドバイザー
軽部 良典
公的保険アドバイザー / 2級FP技能士 / 証券外務員一種・二種

うつ病で就業不能状態になる人は多い?

厚生労働省が公開する資料によれば、精神疾患を有する総患者数は平成29年(2017年)で約419.3万人(うち外来患者数は約389.1万人)、そのうちの約127.6万人は「気分[感情]障害(躁うつ病を含む)」となっています。

精神疾患を有する患者数の推移

「気分[感情]障害(躁うつ病を含む)」の患者数(入院・外来患者含む)は、平成14年(2002年)で約70.1万人に留まっていますが、15年の経過でその患者数は約2倍に膨れ上がりました。

一方、全国健康保険協会(協会けんぽ)が公開する「現金給付受給者状況調査(令和5年度)」によると、働けない期間が発生した際に支払われる「傷病手当金」の受給件数の構成割合は、「精神及び行動の障害(35.20%)」が最も多い結果となっています。

精神及び行動の障害が理由による傷病手当金の受給件数の構成割合の年度別推移を見ると、平成7年(1995年)は4.45%、平成10年(1998年)は5.12%であるのに対し、平成15年(2003年)には10.14%と倍の伸びとなりました。

令和4年(2022年)には受給件数の構成割合が一時的に減少したものの、平成15年(2003年)以降は右肩上がりで増加し続けており、令和5年(2023年)には過去最高の35.20%を記録しています。

傷病手当金は連続した3日間を含み4日以上仕事に就けなかった場合に支給される手当金です。上述の傷病手当金の「精神及び行動の障害」による受給件数の構成割合の増加は、すなわち精神疾患が原因で就労不能状態となった人の割合を示す数値と言えます。

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調査概要:申込数をもとに算出。オカネコ保険比較調べ、集計期間:2024/11/16〜2024/12/15(申込数が同数の場合は、資料請求数と各社ソルベンシーマージン比率をもとに算出)
※ご検討にあたっては、「商品パンフレット」・「契約概要・注意喚起情報」・「ご契約のしおり・約款」等を必ずご確認ください。

うつ病・精神疾患は就業不能保険の保障対象になる?

働けない期間中の収入減少に備える生命保険として「就業不能保険」がありますが、残念ながらうつ病や精神疾患は、以下の理由から保障対象外とする保険会社が多い傾向にあります。

うつ病や精神疾患が就業不能保険の対象外となる理由
  • 精神疾患は病態などの数値化が難しい
  • 再発の可能性が高い
  • 罹患時および完治の見分けがつきにくい

就業不能保険を含むさまざまな生命保険は、加入者間の公平性を担保するため、健康状態の告知内容や年齢などを基に保険料や給付条件を細かく決定しています。

うつ病や精神疾患は再発の可能性が高いものの、罹患時や完治した際の見分けがつきにくく、数値でのデータ化も難しいため、誤給付や不正受給を防ぐために保障対象外とされている場合が多いです。

ただし、精神疾患が保障される就業不能保険がまったく無いわけではありません。

近年の精神疾患による患者数の増加傾向から、うつ病や精神疾患が理由で就業不能状態となった場合でも、通算18回まで給付金が支払われる保険や一時金でまとまった金額が支給される保険など、さまざまなタイプの就業不能保険も登場しています。

ここでは、「一般的な就業不能保険ではうつ病や精神疾患などは保障の対象外」、「一部の保険会社では精神疾患も保障範囲に含まれる就業不能保険が存在する」という2点を覚えておきましょう。

監修者 株式会社400F オンラインアドバイザー
軽部 良典
公的保険アドバイザー / 2級FP技能士 / 証券外務員一種・二種

うつ病や精神疾患は発症される方が多く、罹患や完治が判断しにくいため、うつ病や精神疾患を就業不能給付金の対象外としている保険会社が多いです。

ただ、保険会社によっては入院した後であれば就業不能給付金の対象になり、一定期間給付される場合があります。

うつ病や精神疾患に関する保障を求める方は、就業不能給付金の支払い条件をしっかり確認しましょう。

就業不能保険でうつ病に備える際に意識すべきポイント

就業不能保険でうつ病に備える際は、次のポイントを意識して比較検討しましょう。

加入時の告知事項や免責期間の有無を確認する

就業不能保険の加入時は、健康状態の告知義務が課せられます。

うつ病や精神疾患を含む療養中の病気がある場合や告知内容により、場合によっては就業不能保険への加入を断られてしまうかもしれません。

また、一般的な就業不能保険には就業不能状態となってから保障を受けられるまでに、一定の空白期間(免責期間)が設けられています。

就業不能保険の免責期間は通常60日間ですが、一部の保険会社では免責期間を設けていないケースや30日間など比較的短めなケースがあります。

免責期間による縛りがゆるい就業不能保険は、保障範囲が限定的で病気や症状が絞られている可能性があるので、うつ病や精神疾患による就業不能状態が保障範囲に含まれるかを契約前に確認しておきましょう。

監修者 株式会社400F オンラインアドバイザー
軽部 良典
公的保険アドバイザー / 2級FP技能士 / 証券外務員一種・二種

就業不能保険は生命保険に該当するため、加入する際に治療歴の有無や健康診断の結果を保険会社への告知が必要です。そのため、うつ病や精神疾患の治療歴がある場合は加入できないケースがあります。

また、就業不能給付金の支給が開始されるまでの免責期間の日数や給付条件も保険会社によって異なるため、加入をご希望の際はご自身の治療歴の詳細、何日目から就業不能給付金が支給されるのかなど、事前に確認しておくと良いでしょう。

保険金の給付期間が長い就業不能保険を選ぶ

厚生労働省の「令和2年(2020)患者調査の概況」によると、うつ病を含む気分障害による入院患者は約2.8万人(※1)平均的な入院日数は約137日(4ヶ月半)とされています。このうち、15~34歳の平均入院日数は約40日前後です。(※2)

うつ病や精神疾患の治療は長期化しやすいため、就業不能保険に加入する際はなるべく保険金の給付期間が長いタイプを選ぶと良いでしょう。

(※1)令和2年(2020)患者調査の概況_表2 傷病分類別にみた施設の種類別推計患者数
(※2)令和2年(2020)患者調査の概況_表6 傷病分類別にみた年齢階級別退院患者の平均在院日数

就業不能保険の保障内容と保険料のバランスを考慮する

就業不能保険を含むさまざまな保険商品は、保険金の給付期間を長くしたり保障範囲を広げるなど、保障内容を充実させるほど月々の保険料が値上がりしていきます。

就業不能保険は働けない期間中の収入減少を補填する役割を持った生命保険で、医師などから就業不能状態とみなされない限りは保険金を受け取ることができません。

一方、病気やケガの高額な医療費に備えられる「医療保険」や「がん保険」、保障を備えながら将来への貯蓄に取り組める「貯蓄型保険」など、他に検討すべき保険商品もたくさんあります。

就業不能保険に加入する際は、月々の保険料が家計の負担にならないよう保障内容とのバランスを考慮することが大切です。

就業不能保険だけに頼るのではなく公的支援制度も併用する

うつ病や精神疾患なども保障範囲に含まれる就業不能保険は、給付金の支給要件が通常よりも厳しく設定される傾向にあります。

加えて給付金の支給回数が制限されるケースも多いため、保障が不十分な場合や一切の保障を受けられないことも起こり得ます。

就業不能保険でもしものときの精神疾患に備えたい方は、保険が使えない場合に備えて、精神疾患で使える公的支援制度についても確認しておきましょう。

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※ご検討にあたっては、「商品パンフレット」・「契約概要・注意喚起情報」・「ご契約のしおり・約款」等を必ずご確認ください。

うつ病や精神疾患になった時に使える公的支援制度

この項目では、うつ病や精神疾患となった際に使える公的支援制度をまとめてご紹介します。

うつ病や精神疾患になった時に使える公的支援制度

何かとストレスを抱えやすい現代では、いつどのタイミングでうつ病や精神疾患を発症するか予測できません。

もしものときに備えて、うつ病や精神疾患の際に使える公的支援制度を確認しておきましょう。

自立支援医療制度

自立支援医療制度の概要
適用条件・精神通院医療:精神保健福祉法第5条に規定する統合失調症などの精神疾患を有する者で、通院による精神医療を継続的に要する者
・更生医療:身体障害者福祉法に基づき身体障害者手帳の交付を受けた者で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳以上)
・育成医療:身体に障害を有する児童で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳未満)
支給金額窓口での支払額が医療費の1割または自己負担上限額に軽減
参考:自立支援医療制度の概要|厚生労働省

自立支援医療制度は、心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減するための支援制度です。

対象となる主な障害と治療例は次のとおりで、通常の公的医療保険では医療費の自己負担が最大3割負担になりますが、自立支援医療制度が適用されると一律1割負担(または自己負担上限額)に軽減されます。

自立支援医療制度の対象となる主な障害と治療例
  1. 精神通院医療:精神疾患→向精神薬、精神科デイケア等
  2. 更生医療、育成医療
    (1)肢体不自由:関節拘縮→人工関節置換術
    (2)視覚障害:白内障→水晶体摘出術
    (3)内部障害:心臓機能障害→弁置換術、ペースメーカー埋込術、腎臓機能障害→腎移植、人工透析

参考:自立支援医療制度の概要|厚生労働省

また、治療期間の長期化により1割の医療費負担が積み重なり過大とならないよう、所得などに応じたひと月あたりの自己負担上限額も定められています。

さらに、統合失調症など、高額な医療費が発生する治療を長期で受ける場合は、自己負担上限額が引き下げられる「重度かつ継続の特例」もあります。

特別障害者手当

特別障害者手当の概要
適用条件精神又は身体に著しく重度の障害を有するため、日常生活において常時特別の介護を必要とする状態にある在宅の20歳以上の者に支給
支給金額28,840円(令和6年4月より適用)
参考:特別障害者手当について|厚生労働省

特別障害者手当は、精神や身体に著しく重度の障害を持ち、常時介護を必要とする20歳以上の方に特別手当が支給される支援制度です。

令和6年4月からはひと月あたり28,840円が支給され、原則として毎年2月・5月・8月・11月にそれぞれの前月分までの金額がまとめて支給されます。

なお、受給資格者やその配偶者、受給資格者の生計を維持する扶養義務者の前年の所得が一定額以上の場合、特別障害者手当は支給されません。

お住いの地域を管轄する市区町村の窓口で手続きを行う必要があるため、詳細については窓口担当者までご確認ください。

傷病手当金

傷病手当金の概要
適用条件1. 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
 (1)業務時間中の病気やケガは労災保険の給付対象
2. 療養担当者の意見等を基にして「仕事に就くことができない状態」であると判断されること
3. 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
4. 休業期間中に給与支払いがないこと
支給金額支給開始日以前の継続した12ヵ月間の各月の標準月額を平均した額÷30日×2/3
参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会

傷病手当金は、会社員や公務員が加入する「健康保険」の被保険者が、業務外の事由による病気やケガで働けない期間が発生した際に手当が支給される制度です。

連続した3日間を含む4日間以上仕事に就けない場合、支給開始日から通算して1年6ヶ月の間、働けない期間が続く限り、手当が支給されます。

支給される金額はそれまでに受け取っていた給与額の約3分の2程度で、働けない期間中の収入減少を補填する役割を担っています。

なお、傷病手当金が支給されるのは健康保険の被保険者のみ(会社員や公務員など)に限られており、自営業やフリーランスなどの個人事業主が加入する国民健康保険には傷病手当金に代わる制度が存在しません

自営業やフリーランスなどの個人事業主は公的保障が手薄な状態のため、ここまでにご紹介した支援制度、うつ病や精神疾患を保障範囲に含む民間医療保険で万全の備えを準備しておく必要があります。

監修者 株式会社400F オンラインアドバイザー
軽部 良典
公的保険アドバイザー / 2級FP技能士 / 証券外務員一種・二種

うつ病や精神疾患になってしまった際は、自立支援医療制度、特別障害者手当、傷病手当などの公的保険制度を受けることができます(所定の条件を満たす場合)。

これらの制度を確認しないまま就業不能の保障を備えると、保障を過剰に持ちすぎてしまう可能性があります。

傷病手当(会社員や公務員対象)でもらえる金額は、年収や勤務先によって金額が異なるため、公的保険に精通しているプロに確認すると良いでしょう。

まとめ

就業不能保険は所定の就業不能状態となった場合に給付金が支払われる保険商品ですが、うつ病や精神疾患などは以下の理由から保障対象外とする保険会社が多い傾向にあります。

うつ病や精神疾患が就業不能保険の対象外となる理由
  • 精神疾患は病態などの数値化が難しい
  • 再発の可能性が高い
  • 罹患時および完治の見分けがつきにくい

ただし、近年ではうつ病や精神疾患も保障範囲に含まれる就業不能保険が登場しており、保障範囲をしっかりと確認した上で加入すれば、就業不能保険でうつ病や精神疾患に罹患した場合の収入減少に備えられる可能性があります。

一方、うつ病や精神疾患で就業不能保険を使う場合、通常よりも給付条件が厳し目に設定されるため、場合によっては保険金を受け取れないこともあるでしょう。

もしものときに備えて、うつ病や精神疾患となった際に使える公的支援制度について、事前に確認しておくと安心です。

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調査概要:申込数をもとに算出。オカネコ保険比較調べ、集計期間:2024/11/16〜2024/12/15(申込数が同数の場合は、資料請求数と各社ソルベンシーマージン比率をもとに算出)
※ご検討にあたっては、「商品パンフレット」・「契約概要・注意喚起情報」・「ご契約のしおり・約款」等を必ずご確認ください。

オカネコ保険比較 編集部

オカネコ保険比較 編集部

オカネコ保険比較は「オカネコ」を運営する株式会社400F(フォーハンドレッド・エフ、本社:東京都中央区、代表取締役社長:中村 仁)が運営、デジタル技術を駆使し、保険選びをシンプルで分かりやすく、そして便利にすることで、各人が自身に合った保険を見つけられるよう努め、手続きの煩雑さを減らすことを目指しています。

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