監修者

軽部 良典
証券外務員一種・二種 / 2級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 生命保険募集人 / 損害保険募集人 / 実用英語技能検定2級 / 全日本剣道連盟 剣道二段 / ITパスポート / 経営管理修士
離婚をしたあとも、生命保険に加入し続けることは可能ですが、契約者や受取人の名義変更などの手続きが必要な場合があります。
また、安易に生命保険を解約すると、新規加入ができず保障がなくなるリスクや、元本割れによる損失が生じるケースもあるため慎重な検討が必要です。
離婚をする際に必要な生命保険の手続きや注意点、見直しのポイントなどについてわかりやすく解説します。
離婚時に必要な生命保険の変更手続き
生命保険の契約は「契約者」「被保険者」「保険金受取人」という3つの人物からなりたちます。それぞれの役割は、以下のとおりです。
「契約者」「被保険者」「保険金受取人」の役割
- 契約者:生命保険会社と契約を結ぶ人。契約内容の変更や解約など契約に関する権利を持つ
- 被保険者:保険の対象となる人。その人の生死や病気、ケガなどが保険の保障対象となる
- 保険金受取人:保険金や給付金を受け取る権利を持つ人
離婚をして契約者または保険金受取人が元配偶者になるときや、名字や住所などに変更が生じたときは保険会社で手続きをします。主な手続きは以下のとおりです。
離婚時に必要な変更手続き | |
---|---|
契約者の変更 | 元配偶者が契約者の場合は必要に応じて自分へ変更する |
保険金受取人の変更 | 元配偶者が保険金受取人になっている場合は、子どもや親など適切な人へ変更する |
指定代理請求人の変更 | 被保険者かつ保険金受取人の代わりに保険金・給付金を請求する人が元配偶者の場合、子どもや親などに変更する |
契約者の姓・住所などの変更 | 旧姓に戻した場合や引っ越しした場合は、契約者の氏名や住所を変更する |
保険料支払方法の変更 | 契約者変更にともない、口座振替やクレジットカードが変わったときは情報を更新する |
上記の変更手続きは離婚後にもできます。しかし、離婚したあとは元配偶者と連絡が取りにくくなり、思うように手続きが進められないケースも多いため、離婚前に済ませておくのがおすすめです。
離婚の際に必要となる手続きについて詳しく解説します。
契約者の変更(名義変更)
離婚の前に配偶者を契約者として生命保険に加入していた場合、自身に変更するときは保険会社での手続きが必要です。
契約者をそのままにしていると、離婚したあとに保障内容の変更や解約などをするときは元配偶者に連絡を取らなければなりません。
また、保険料が支払われていないときは元配偶者に催促の連絡をすることになり、改善されない場合は契約が失効する可能性もあります。
契約者を変更する際は、被保険者と生命保険会社の同意が必要です。変更完了までに書類の提出から1週間ほどかかることもあるため、早めに手続きをすることが大切です。
保険金受取人の変更
死亡保険金の受取人が元配偶者になっている場合は、必要に応じて子どもや親、新しい配偶者など適切な人物に変更しましょう。
契約者と被保険者が自分自身の場合、離婚後も保険金受取人が変更されていないと、万が一のことがあった際に元配偶者が保険金を受け取ることになるためです。
保険金受取人を変更するときは、契約者が加入先の保険会社で手続きをします。また、被保険者の同意が必要です。
なお、保険会社によっては内縁関係にある人や事実婚関係にある人、同性のパートナーなどを死亡保険金の受取人にすることも可能です。
ただし「お互いに戸籍上の配偶者がいない」「一定の期間同居している」など、保険会社が定める要件を満たす必要があります。
指定代理請求人の変更
指定代理請求人は「病気やケガにより意思表示ができない」「傷病や余命の告知を受けていない」などの事情がある被保険者に代わって保険金や給付金を請求できる人です。被保険者と受取人が同じ人物の場合に指定できます。
指定代理請求人に指定できるのは、配偶者や直系血族などの親族に限られるのが一般的です。
離婚した元配偶者が指定代理請求人となっている場合は、子どもや親など保険会社の定める条件に該当する人に変更する手続きを行いましょう。
契約者の氏名・住所などの変更
離婚により名字が旧姓に戻る場合は、生命保険の契約者名を変更する手続きが必要です。
保険証券の名義が現状と異なると、保険金請求を始めとした各種手続きの際に支障が出る可能性があります。
また、契約者の住所や電話番号などが変わった場合も保険会社に届け出ましょう。契約者宛ての郵送物や保険会社からの連絡が確実に届くようにするためです。
保険料の払込方法の変更
「離婚により生命保険の契約者を配偶者から自分に変更した」「配偶者が保険料を支払っていた」などの場合では、保険料の払込方法を変更する手続きも必要です。
離婚後も問題なく保険料が支払えるよう、引き落とし口座やクレジットカードなども変更しておきましょう。
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離婚時の生命保険の変更手続きの注意点
離婚時の生命保険の手続きでは、以下の点に注意が必要です。
受取人が元配偶者だと生命保険料控除の対象にならない

離婚後も死亡保険金の受取人を元配偶者のままにしていると生命保険料控除が受けられなくなります。
生命保険料控除とは、生命保険の保険料を支払っている人が受けられる所得控除です。
一定の要件を満たすと年間に払い込んだ保険料に応じた一定金額がその年の所得から控除されるため、所得税や住民税の負担を軽減する効果が期待できます。
生命保険料控除を受けられるのは、保険金受取人が以下のいずれかである生命保険の保険料を支払ったときです。
- 契約者本人
- 契約者の配偶者
- 契約者のその他の親族
離婚した元配偶者は上記のいずれにも該当しないため、離婚後も保険金受取人のままにしていると、生命保険料控除の対象外となり、所得控除が受けられなくなります。
離婚後も生命保険料を払い続ける場合は、保険金受取人を子どもや親、新しい配偶者などに変更しましょう。
貯蓄型保険は財産分与の対象になる場合がある
終身保険や養老保険、学資保険など貯蓄型の生命保険は、離婚時の財産分与の対象になることがあります。
財産分与とは、婚姻生活を送るあいだに夫婦で協力して築いた財産を、離婚の際にそれぞれの貢献度に応じて分配することです。
貯蓄型保険の保険料を、婚姻中の共有財産から支払っていた場合、解約したときに受け取れる解約返戻金が財産分与の対象となります。
財産分与の対象となる場合、以下のような方法で精算するのが一般的です。
貯蓄型保険の財産分与の一般的な精算方法
- 貯蓄型保険を解約して解約返戻金を2分の1ずつ分ける
- 解約しない場合は離婚または別居した時点での解約返戻金額を基準として、その半額を継続する側に支払う
貯蓄型保険は必ず財産分与の対象となるわけではなく、当事者の合意があれば対象外とすることも可能です。たとえば、子どもの教育資金を積み立てるための学資保険は財産分与の対象にならないケースがあります。
また、掛け捨て型の生命保険は、解約返戻金がないかあってもごくわずかであるため、基本的に財産分与の対象になりません。
離婚の際は、加入している生命保険や解約返戻金の金額を調べ、財産分与の対象とするかどうかや精算方法などをよく話し合うことが大切です。
子どものために契約している保険の契約者は慎重に検討する
子どもの教育資金を準備するために、学資保険を契約している場合は、離婚後の契約者を誰にするかよく話し合って決め、必要に応じて親権者に変更手続きをするのが望ましいです。
契約者がそのままになっていると、後に税金が課せられたりトラブルが生じたりすることがあるためです。
たとえば、学資保険の契約者と保険料を負担する人が、子どもを引き取らない側の親であるとしましょう。この場合、子どもを引き取り育てている親は、その学資保険の満期保険金やお祝い金を受け取ることができません。
子どもを引き取っていない親から養育をしている親に満期保険金やお祝い金などをわたす場合は贈与となり、他の贈与も含めて受け取った金額が年間で110万円を超えると、金額によっては贈与税が多額となるため注意が必要です。
また、満期保険金を受け取るタイミングになったときに「元配偶者と連絡が取れない」「お金をわたしてくれない」などのトラブルも起こり得ます。
こうした事態を防ぐためにも、離婚の際は学資保険の契約者を養育者に変更するとよいでしょう。養育者となる人の収入から考えて保険料負担が重い場合は、その分を考慮して養育費の金額を決める方法もあります。
保険に関する取り決めは書面で残す
離婚の際、財産分与の対象となる生命保険や分与の方法などを取り決めたときは、その内容を書面に残しておくとよいでしょう。口頭で取り決めをしても法的には問題ありませんが、あとで言った言わないのトラブルが生じる恐れがあります。
たとえば、婚姻をしたあとに加入した終身保険を離婚時に解約せず、夫が契約者となって続けるとしましょう。話し合いにより、離婚時の解約返戻金の2分の1を夫が妻に支払うことになりました。
しかし、離婚をしても夫からお金が一向に支払われません。催促の連絡をしても「そんなことを決めた覚えはない」と言われてしまいます。
このような事態を避けるためにも、生命保険に関する取り決めをしたときは、離婚の際に夫婦間での約束ごとを記載する「離婚協議書」に内容を明記しておきましょう。
離婚協議書に夫婦が署名・捺印をすることで、契約書と同じ法的な効力を持ち、調停や裁判に発展した際に有力な証拠となります。
また、離婚協議書を作成する場合は、公正証書にして「強制執行認諾文言」を記載するとよいでしょう。
この文言が記載されていると、相手側が取り決めたとおりに支払いをしなかったときは、裁判を経ずに給与や財産の差し押さえなどの強制執行ができます。
家族型・夫婦型の場合は配偶者や子どもの保障がなくなることがある
家族型・夫婦型医療保険とは、被保険者本人に加えて、配偶者や子どもも保障の対象となる保険商品です。個別に医療保険に加入するよりも保険料を抑えられる他、契約が1つで済むため管理が楽になるというメリットもあります。
離婚をすると、配偶者や親権を持たない側の子どもは家族型・夫婦型医療保険の保障対象外になるのが一般的です。
そのため、離婚を検討している方は、現在加入している保険会社に連絡をして、離婚後の取り扱いについて確認することが重要です。
配偶者や子どもの保障が消滅する場合は、別の医療保険に加入し直すことも検討する必要があるでしょう。
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離婚時の生命保険の見直しポイント
離婚をすると、基本的には家族構成や生活環境が変わるため、加入している生命保険や保障内容を必要に応じて見直しましょう。
ここでは、離婚後に子どもがいないケースとひとり親世帯となって子どもを育てるケースに分けて、生命保険を見直す際のポイントを説明します。
子どもがいない場合
離婚したあとに、子どもや親など扶養する家族がいない場合は、手厚い死亡保障の必要性は低いと考えられます。
一方で、自身が亡くなったあとの葬儀費用や遺品の整理費用などを賄える程度の死亡保障は必要な場合があります。
婚姻期間中、万が一のときの残された家族の生活資金やローンの返済資金などを準備するために死亡保険金額を高くしていた場合は、減額や解約を検討しましょう。
死亡保障とあわせて検討したいのが、医療保障や就業不能保障です。1人暮らしの場合でも、自身が病気やケガで入院・手術をしたり、長期間働けなくなったりすると、医療費の支払いや収入の減少で生活が苦しくなることがあります。


公的医療保険により、病気やケガを治療するときの自己負担分は実際にかかった医療費の最大3割で済みます。ひと月あたりの自己負担額が高くなったときは「高額療養費制度」を申請して負担を軽減することも可能です。
会社員や公務員など健康保険に加入する人であれば、病気やケガで働けなくなったときは健康保険の傷病手当金を受け取ることができます。
しかし、公的な保障のみで医療費の支払いや収入減少に対して十分に備えられるとは限りません。
そのため、病気やケガに備えられる「(民間)医療保険」や所定の働けない状態になると給付金が支払われる「就業不能保険」に加入して備えることも検討しましょう。
子どもがいて母子家庭(父子家庭)になる場合
未成年の子どもを引き取り、ひとり親世帯となった場合は、離婚前より手厚い死亡保障が必要になることがあります。とくに、これまで稼ぎ頭であった夫と離婚し、妻が幼い子どもを育てていく場合、死亡保障の増額や新規加入を検討しましょう。
シングルマザー・シングルファーザーは、世帯にとって唯一の稼ぎ手です。万一のことがあったとき、残された子どもの生活費や教育費などの支払いが苦しくならないよう、十分な死亡保障に加入するのが望ましいのです。
国民年金や厚生年金といった公的年金に加入する人が亡くなったとき、その人によって生活を経済的に支えられていた子どもには「遺族年金」が支給されます。
自身に万が一のことがあったときの子どもの生活費や学費などが遺族年金のみで賄うことが難しい場合は、生命保険に加入して不足分を補っておきましょう。

とはいえ、離婚をすると世帯収入が減るケースも多いため、保険料が家計を圧迫しないようにすることも重要です。
そのため、保険料が割安な掛け捨て型の生命保険を活用するとよいでしょう。主な掛け捨て型の生命保険は、以下のとおりです。
主な掛け捨て型の生命保険
- 定期保険:10年や20年など一定の保険期間中に万が一のことがあると保険金が一括で支払われる保険
- 収入保障保険:万が一のことがあると契約時に決めた金額の年金が保険期間の満了まで支払われる保険
また、保護者が病気やケガで治療が必要になったときや、療養により働けなくなったときに備えて医療保険や就業不能保険の加入も検討するとよいでしょう。
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離婚時に解約をしないほうがよいケースも
離婚の際、以下のようなケースに該当する場合は、生命保険の解約をしないほうがよいこともあります。
離婚時に解約をしないほうがよいケース
上記に該当する場合は、解約をすべきか慎重に検討することが大切です。
被保険者の健康状態が悪く新規加入が難しい場合
多くの生命保険では、新規加入するときや増額をするとき、保険会社に健康状態の告知が必要です。
保険会社は、告知された内容と必要に応じて健康診断の結果や医師による診査の結果なども踏まえて引き受けの可否を判断します。
離婚をきっかけに、加入中の生命保険を解約して他の保険に乗り換えることもあるでしょう。
しかし、持病がある方や過去の一定期間に大病を患ったことがある方などは、生命保険を申し込んでも保険会社から引き受けを断られることがあります。
加入できたとしても「保険料が割増しになった」「保険金が削減された」「特定の部位や疾病が保障対象外となった」といった特別条件が付くケースもあります。
先に加入中の保険を解約すると、新しく申し込んだ生命保険に加入できなかったとき、保障がなくなってしまうかもしれません。
自身の健康状態から考えて生命保険の新規加入が難しいときは、現在加入している保険は解約しないほうがよいでしょう。
乗り換えをする場合は、新しく申し込んだ生命保険の契約が成立するのを待ってから加入中の保険を解約することをおすすめします。
解約返戻金が元本割れするとき
貯蓄型の生命保険は、解約のタイミングによっては解約返戻金が払い込んだ保険料の総額を大きく下回って元本割れすることがあります。
とくに、契約期間が短ければ短いほど元本割れは生じやすくなります。
貯蓄型保険を解約すると元本割れが生じる場合は、解約返戻金の基準に決めた金額を契約者となる側に支払う形で財産分与し、契約を継続するのも1つの方法です。
財産分与の際は、貯蓄型保険の解約返戻金についてもよく調べたうえで、財産分与の方法を考えることが大切です。
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まとめ
離婚の際は、必要に応じて契約者や保険金受取人、指定代理請求人などの変更手続きをしましょう。とくに、元配偶者が契約者や受取人になっている場合は、速やかに変更することが大切です。
また、離婚をすると家族構成や生活環境が変化するため、保障内容の見直しも検討するとよいでしょう。
たとえば、子どもを引き取ってひとり親世帯になる場合は、万が一に備えて死亡保障を手厚くしたほうがよいかもしれません。
生命保険の変更手続きや見直しには複雑な部分があり、専門的な知識が求められるため、保険代理店やファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。
監修者

軽部 良典
証券外務員一種・二種 / 2級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 生命保険募集人 / 損害保険募集人 / 実用英語技能検定2級 / 全日本剣道連盟 剣道二段 / ITパスポート / 経営管理修士